第28話 真実

 私の唯一の名付け親様へ


 はじめまして、私は小瀬川真美まみと申します。

 もしかしたら、貴方はこの名字を見て、破り捨てたくなっているかもしれません。

 そうならば、ごめんなさい。不快ですよね、どうぞ破り捨ててください。

 もし、逆に誰なんだろうと不思議に思っているのかもしれません。

 それならば、私達の間に何があったのかというお話をさせていただきたいです。

 といっても、私も祖母と母から伝え聞いたことではあるのですが。


 辛い真実になるので、覚悟してください。

 知りたいなら、次の紙へと進んでください。

 勿論、読まないという選択でも十分です。

 本当に申し訳ありません。

 私のお気持ちである出演料だけを、受け取ってもらえたら嬉しいです。




 こちらへ進んでくださり、ありがとうございます。

 私には学がないため読みづらいと思いますが、ご容赦いただけたらとおもいます。

 まず、貴方様のご両親を死に追いやったのは私の母親と私のせいなのです。

 母は、ずっと女でした。母にも大人にもなれず、身の丈に合わないほど着飾って、ただいい男を捕まえることだけが趣味の人でした。

 そんな母に捕まったのが貴方のお父様でした。

 貴方のお父さんは恐ろしい女に捕まった可哀想な被害者なのです。

 しかも、当時誰との子かもわからない私を、気が弱そうな男だからと適当に押し付けられ、貴方様のご両親は大変困惑したことでしょう。

 その後、お二人は話し合いをするために外に出てた所、運悪く飲酒運転の車に巻き込まれ、亡くなったそうです。


 親戚の皆さんは、幼い貴方と生まれたばかりの私の扱いに大変苦労していたと思います。


 その後、酔っ払った母親が突撃し、祖母が迎えに行くまでの数日間、貴方は私のお兄ちゃんとして一緒に遊んでくれていたそうです。

 私の「まみ」という名前は、その時貴方様が呼んでいた名前だと祖母は話していました。

 こんな優しくて素敵な貴方様から、私達が家族を奪ってしまった事、本当に申し訳無く思っています。


 本当にごめんなさい。



 一緒にお渡しする出演料については、私からの謝罪の気持ちです。

 ぜひ、受け取ってくださると幸いです。

 人生で初めて自分で稼いだお金です。

 本当は直接お会いして、お渡しすべきなのですが、それは難しいので。

 どうか、少しでも貴方のこれからの明るい人生の足しにしてください。

 私は貴方の幸せな人生を遠い所から、ずっとお祈りしています。


 追伸

 もし、貴方様がどこかで持田宗一郎さんという方に会ったら、

 ありがとう、とお伝えしていただけると嬉しいです。

 厚かましいお願いでごめんなさい。



 小瀬川真美より

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