あとがき

あとがき

 平安時代に活躍した貴族、小野篁。

 井戸から地獄へ行き、閻魔大王の補佐をしたという伝説の持ち主だ。

 身長が188センチもあり、若い頃は武芸に明け暮れた。書や短歌うたの才もあり、さらには政治の才もあった。


 こんなチートキャラみたいな人、なかなかいませんよ。

 しかも、織田信長や坂本龍馬のようにメジャーな人物ではないのです。


 平安時代といえば、やっぱり安倍晴明が有名ですよね。あとは創作ではありますが、光源氏とかでしょうか。少しマニアックなところをいけば、源頼光とか。

 彼らよりも少し前の時代に活躍していた、小野篁。

 どういうわけか、私はこの人物にスポットライトを当てたくなってしまったのです。

 小野篁の物語を書く前にしたことは、やはり小野篁がどんな人なのかを調べなければなりませんでした。

 基本的な情報はWikipediaなどで調べれば出てきます。ただWikipediaだけでは深い話までは書かれてはいません。そのため、平安時代に関する歴史書などを何冊か買いました。

 元々歴史は好きでした。でも、好きだったのは戦国時代や幕末といったところであり、平安時代に関しては見向きもしていませんでした。

 TAKAMURAを書くにあたって、小野篁についてはもちろんのこと、平安時代についての勉強もかなりしました。

 平安時代、貴族はどのような立ち位置にいたのか。政治的な部分はもちろんのこと、後々現れる武士たちとの関係、庶民との違い、文化や衣服などについて。

 結構苦労したことは、小野篁の活躍した平安初期に関しての資料が少ないということです。平安時代の中でも、中期から後期に関しては様々な資料や本があったりします。これは、それこそ源氏物語や陰陽師・安倍晴明のお陰でしょうね。

 平安初期は中期に比べると、あまり煌びやかな時代じゃなかったりもします。闇の部分が大きいのです。だからこそ、篁が地獄に行ったり、百鬼夜行に出くわしたりといった話が出てくるのでしょう。


 小野篁に関しては、江談抄という本に色々な逸話がまとめられていたりします。そもそも江談抄は大江匡房という平安後期の公卿の話を聞き取ってまとめたものであって、創作性の強い話が多かったりします。ただ、小野篁の伝説はこの江談抄から始まっているといっても過言ではないのです。江談抄よりも古い書物には小野篁という人物の話は出てきません。唯一出てくるのは、続日本後紀であり、続日本後紀は今でいうところの年表のようなもので、何年にどの官職に就いたといったことぐらいしか載っていなかったりしています。

 歴史的な観点から見た小野篁については、続日本後紀から読み取り、逸話については江談抄や今昔物語といった読み物から拾い上げる。

 そんな感じで小野篁という人物がどんな人であったのかを想像してみました。

 その結果が、この『TAKAMURA』となったわけです。

 一応は歴史に沿った内容で書いてはいます。もちろん、鬼だったりあやかしだったりとの戦いについては完全な創作ですが。


 篁についての物語を書いていると奇妙な因縁を感じたりもすることがありました。

 それを一番感じたのは、両面宿儺です。

 篁が戦う鬼や鬼神をどうしようかと悩み、平安時代に現れた妖怪などを調べていた時、両面宿儺に出会いました。両面宿儺は漫画『呪術廻戦』でも有名なキャラですね(すいません、読んでいないので詳しくはわからないです)。両面宿儺について色々と調べてみたところ、篁との接点がわかりました。両面宿儺を退治した武振熊命は、篁の祖先だったのです。これを知った時は、鳥肌が立ちました。


 TAKAMURAを書いていくことで、私の中で平安時代の知識、妖怪や鬼神についての知識、はたまた地獄に関する知識などが一層深まりました。

 平安時代ってこんなにも面白い時代だったんだと、感激しています。


 さて、小野篁の物語はここで一旦終わりを迎えます。

 ですが、このTAKAMURAは小野篁という人物の若い頃を描いただけなのです。

 まだまだ篁のエピソードは数多く残っています。


 もはや勘の良い方はお気づきでしょう。

 TAKAMURAの続編を書きます。

 いや、書かせてください。そして、読んでください。

 まだまだ小野篁という男の話は尽きないのです。


 ここまで読んでくださった皆様には感謝しかありません。

 ありがとうございました。


 そして、次回作でお会いできることを楽しみにしています。



 ――――2023年8月 作者

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TAKAMURA 大隅 スミヲ @smee

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