第9話 包帯ぐーるぐーる


あれから何時間経ったろう?

起き上がろうとすると、俺は全身が包帯でぐるぐる巻きにされて

まるでミイラのようにされていた。全く身動きができない!


ただ意識が無くなる前に感じていた猛烈な痛みは嘘のように無くなっていた。


どうやらどこかの家の一室のベッドの上に寝かされているようだ。高価そうな調度品が揃えられている。


「ようやく目が覚めたかのう~ふおっふおっふおっ」


目の前に現れたのは....どこかで見たことがある顔。そうあのカジノで大損していた老魔導士だった。


「あの、ここはどこなんですか?俺はどうなってしまったんですか?」


「君はのう、恐らく途中までは覚えているじゃろうが、猛毒アリに噛まれてしまい精神が錯乱状態になりながら危うく死ぬところじゃったんじゃよぉ~ふおっふおっふおっ、わしは草原で君を偶然見かけたのでな、気の毒に思って解毒魔法を何度も使って、毒抜きをしたのじゃ。そのあと村の若いものに頼んでわしの家まで運んできてもらったんじゃ」


「そうですか、すいません。命を助けてもらいありがとうございます。でもなんでこんな包帯でぐるぐる巻きにする必要があったんですか?」


「ああそれか、実は猛毒グモの毒は非常に強力なのでな、いくら解毒魔法を使っても、後遺症でまた毒がぶり返して錯乱状態になる可能性があるからのう~こんばんはこのまま我慢してもらうぞよ~」


「わかりました。あのう...俺」


「礼なぞいらんぞよ~お主が盗賊見習いに全て盗られて無一文なのは知っておるからのう~」


「えっ?なんでそこまで知っているんですか?」


「えっ?いやそのゴホッゴホッ!おお実はお主の事をカジノで見かけて、監視魔法で危険な目に合わないか見ておったからじゃ」


「そうですか....ちょっと監視魔法で見られたのが怖い気もしますが...ありがとうございます」


「儂も年での、君が盗賊見習いに襲われているのは分かっておったのじゃが、助けることはできなんだ、すまんかったのう~でもいきなり真っ裸になったのは儂も仰天したぞい!わっははははははあ」


俺は顔が真っ赤になり。布団を顔からかぶってしまった。


「ところで、お若いの、ハンス君とカジノでは呼ばれておったの、君は何故冒険者としてそこまで、レベルアップに拘るのじゃな?君の才能があるなら、わざわざ向いてない戦闘をする必要もあるまいにのう~」


「だってこの世界では力のあるものが全てじゃないですか?剣の力、あなたのように魔法の力、あるいは武道の力、力をつけてレベルアップをしていけば、どんな望みも叶えられる....俺みたいに多少数字に強くても設備が古いカジノで少し儲けるのが精いっぱいですよ....」


「ほお?お主は"力"が剣や魔法、武道によりのみ手に入れられると...本当にそう思っているのかのう?」


「えっだって小さい時から、死んだオヤジにもそう教えられてきたし、今まで冒険家になった仲間も現に今もそうやってみんな生活している奴が多いですが...」


「う~ん、そうか....じゃがもし儂が、剣や魔法以外にも、いやそれらよりもっとお主の才能を生かしたレベルアップの方法があると言ったら、どう思うかの?」



えっ?この老魔導士は何を言っているんだろう?

俺はこの先、一生の師と仰ぐこの老人の話を聞くことにした。

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