第6話 ろっけとにゅー

洞窟の前まで近づくと、洞窟の近くの木陰で何人かの俺の同じような恰好をした冒険者がいた。

そいつらを一瞥すると、内心少しほっとした。


やった俺と同じレベルゼロだ!

馬鹿にされなくてすむ!


冒険者にはランクがあるのはまあテンプレなのだが、

レベルゼロの冒険者には規則で、体の見えやすい部分に 初心者マークを付けないと洞窟に入る事自体が禁止されている。


洞窟には門番がいて、逐次冒険者IDをチェックされるので、ごまかしはきかない。


俺が近づくと、その冒険者はまだ10代の若い女の子たちだった。


「すいません、あのひょっとしたらこれからあの洞窟に入る予定ですか?」


少しだけキョドリながら声を掛けると、その中の一人の少しだけタレ目の女の子が、おどおどしながら応えてくれた。


うっまじで超かわいーんだけど、その上ろけっとにゅうだぁ~ラッキー



「は、はい、今日が初めての冒険なので、他のみんなと今洞窟に入ったらどうやってモンスターと戦ったらいいか話していたんです...あなたも今日が初めてですか?」


「えっいや...その、えっと、そう!そうなんですよ~偶然ですねハハハハハ」


とても3年も初心者のレベルゼロとはいれない....我ながら情けない~~


「でも良かった、私達のパーティー女子だけだから、男子がいてくれると安心出来るよね~」


「そうだね~」


洞窟に入ると、真っ暗な空間が広がり、松明のあかりで照らすも、その光は弱々しく遠くで怪物達の雄叫びのような声が微かに聞こえるのも相まって恐怖を一層増幅していった。



こっ怖い!やっぱり今日は体調悪くなったとか言って引き返そうかなあ~


「あのさあ、俺やっぱ…」


そう言いかけた瞬間、目の前に、

小さいスライムが現れた。


「あっあれは、ひょっとしてゴールデンスライムじゃないでしょうか!」


そうさっきの ろけっとちゃんが言う通り、こいつは中々でないレアキャラ!

弱いくせに、倒すとかなり経験値がつくやつだ。


「あっ逃げた!」


クソ!逃げられてたまるか!

俺は、一瞬だけ洞窟の先に何があるのかをよく考えもせず、ゴールデンスライムを追いかけて奥深く駆け出していた。



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