第3話 カジノで大勝
ここのカジノにしたのは、理由がある。
カジノで俺の数字に強い能力を活かすには、ある条件がそろっている必要がある。
まず、第一の条件、通常カードの束を一つのテーブルで6束くらい混ぜて配るのがよくあるやり方だが。ここのカジノはどう言う訳か4束に抑えられる。たぶんオーナーがケチだからだと思うが....
残りのカードの数が少ないほうが、どのカードが次に来るのか推測する計算も早くなる。
「ハンス、あそこのディーラーのテーブル、空いているぞ、行くべか」
グンターが俺を誘い、テーブルに向かおうとするがその腕を止める。
「ちょっとまってくれ、先ずはそれぞれのテーブルを一通り見回して、各テーブルがどの位カードが残っているかとか、プレイヤーが多いか少ないか吟味する。」
「あ?なんでそんな事するんだ?」
「シュー(トランプが詰まっている箱)の中身が減っていると大抵出るカードに偏りがでる。あとプレイヤーが少ないとこはご免だね、ディーラーの客さばきが上手くないからプレイヤーが逃げている証拠だ」
「はあーそんな事、考えもつかねかったなあーおったまげたあ〜おめえ凄えなあ」
つまり逆に、シューの中身が少なくて他のプレイヤーが多いところが好都合ってことだ...
テーブル10卓ほどあり、昔からいる顔馴染みのディーラーも何人かいるようだった。
よし!あそこのテーブルだ!
テーブルにはよく知っているディーラーがドヤ顔でカードを手慣れた手付きで捌いていた。
そう、こいつには随分と儲けさせてもらったもんだ、まだディーラーやってたとはラッキー!
そう、そして第二の条件は、
カードの切り方に癖があるディーラーを知っていること。
ドヤ顔ディーラーは一瞬俺の顔を認めると、驚きの表情を一瞬見せたがすぐにいつものドヤ顔に戻した。
他の2人のプレイヤーと一緒に席に入る。シューには半分ほどカードが残っている。
俺のもう一つの長所である視力を駆使して集中して、カードの数を数える、シューは透明のクリスタルで出来ているため、中身が見えるようになっている。
カードの残りの数は、97枚。
カードが当初の総カード数の半数より少し下回るケース。
もし、このディーラーのトランプの切り方の""癖""が変わっていなければ、
最後のほうは絵札がかなり多い事になる。今までの過去のデータから、この場合は76%は絵札。つまり、73枚もしくは、74枚は絵札になる。確率的には73枚のほうが可能性が高い。
ディーラーのカードの切り方を思いっきり集中力1000%にして、凝視する。
やはりな、42回切って、その後4回リフルシャッフル
本人はスキルが高いディーラーだと気取っているが、実はそこにはエラーがある。
最初のリフルシャッフルの時点で親指が少しだけ震える、その時、カードの一部分が僅かに一瞬だけ数枚見える。
やった!!
今日は久しぶりで、少し自信がなかったが、7枚分かった。
絵札以外は全部で24枚あるから、ほぼ3分の1の絵札以外のカードの位置が分かったということだ。フフフ...
上から4枚目、22枚目、27枚目、32枚目、38枚目、42枚目、あとは80枚目、85枚目に、絵札以外シャッフル完了!
あとは、その見えたカードを目印にして、勝負するかどうか決められるってわけだ。
席には俺のほかに3人が座っていた、それぞれの表情をのぞき込むと
20代の女魔法使い、50代の戦士、30代のエルフ、あとは、恐らく70歳を超えている、いやひょっとして、老魔導士だから、姿は70くらいでも実際は100歳を超えているかもしれない...
もちろん魔法使いや、魔導士がズルをしないように、ここのカジノ全体に強力な防御魔方陣が張り巡らされているので、イカサマは不可能だ。
「では、皆様、よくお分かりかと思いますが、数名新しいお客様が参加されましたので、規則上改めてゲームの説明をします。ブラックジャックは、ディーラーとプレイヤーがカードを配り、その合計点数が21に近い方が勝利となります。ただし、21を超えると負けになります。」
「では、始めます。ベットをお願いします」
俺たち手持ちのチップを目の前に全部差し出した。
おお!!
おい、まじかよ…
テーブルに座る他のプレーヤーだけでなく通りかがりの客も立ち止まり、周りが少しざわついてきた。
全員がチップを賭けると、ディーラーはそれぞれに2枚つづカードを表向きにおいた。
思ったとおり、俺を含んだプレーヤーの内3人が2枚とも絵札だった。そしてディラーのカードは1枚のみが表向きで、絵札だった。
20代の女魔法使い、50代の戦士、30代のエルフは全員2枚とも絵札、追加カードを要求せず
スタンドを選んだ。そして絵札と、例の上から4枚目の絵札以外のカード ”3” を引いた老魔導士は、ヒットを選び、バーストしてしまったようだ。
フフフ、やはりな~
「あああ、くそう~~まった今日もやられたわい!引き上げるかのう」
老魔導士はくやしそうに席を立ち、その場を去ろうとしたが
俺の顔をみるなり、俺のやや含み笑いを、見咎めることなく、俺の近くまで歩み寄り、ジッと凝視し、余裕のある表情で
「お若いのお気をつけなされよ...ふぉっふぉっふぉっふぉっまた会うこともあろうじゃのう~」
と言いながら立ち去った。
なっなんなんだ、あのおいぼれは...まあいい。気にする必要もないな。
そう、俺の今すべきことはプレーに集中だ。
普通ならば、俺も他のプレイヤーと同じように、スタンドが定石だ。
だが....俺の選択は違う。
「ヒット!」
「ええ!大丈夫なの?もったいないわよ」
他のプレイヤーも言葉にこそ出さないが、一様に同じような視線を俺に向けていた。
このディーラーが仕切るカード配りの癖にはもう一つ特徴がある
後半は確かに絵札が多いが、さっきのパターン、2枚とも絵札が3人のプレイヤーに配られて、4番目に配られたプレーヤーが一枚だけ絵札の場合、
俺の統計が正しければ、次のカードはAその次はやはり絵札、
そしてその確率が92%。
「本当にヒットでよろしいでしょうか?」
とディーラーは少しだけ当惑したような顔で聞いてきた。
「ああ、そうしてくれないか」
「いいのかい?若いの?最初からそんな飛ばさなくてもいいだろうに…」
配られたカードは統計通り、
クラブのAだった。
「おおすごいな~絵札2枚の後にAでブラックジャックかあ!すごい度胸だな!」
いや実際は度胸なんか全然ないひ弱なんだけどね....
そして、ディーラーの番が回ってきた。
まあこの場合、ディーラーも絵札2枚の可能性が高いから、通常ならスタンドだったが、俺がブラックジャックだから勝負しないとな...
「ディーラーのハンドは…」
ディーラーがカードをめくり、一瞬だけ顔を歪ませて、カードを開くと
全部絵札が並べられた。
「バースト!」
ディーラーの負けが宣言され、俺たちは勝利した。
そしてここのカジノのローカルルール、21でディーラーバーストで勝った場合、そのプレイヤーは掛け金が3倍になるルールが適用され、俺の掛け金は3倍になった。
その後も、俺は勝ち続け、目の前にはチップの山が積み上げられ、その日の最高金額を稼ぎ出し、俺たちはカジノを後にした。
カジノを後に帰路の途中、チップの半分をグンターの手に握らせる。
「おいおい!なんだあ~こりゃおめえのもんだろ~」
「いいってことよ、お前とお前の父さん、母さんには世話になってるからな」
「おおっ!すまねえなあ...実は先月博打で家の金少しばかり使い込んじまって、かあちゃん見つかる前に助かったああ!しかし~~ハンスすっげえなあおめえは~冒険者としてはからっきし弱っちいけど、博打の才能だけは、ぴか一だあなあ」
「ううっお前はそれを言うかあ~ほめるか、けなすかどっちかにしてくれよ!!」
俺たちはグンターの家に入っていった。
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