縦糸に恋模様、横糸に神話と歴史と人の生き様。織りなされる、珠玉の物語

私は、子供の頃から恋愛ものが苦手でした。しかしながら、こちらの物語は『恋愛ものが苦手』で避けては、絶対に後悔するところでした。
確かに、主題は第二王子と水の精霊の恋模様ですが、それは、言うなれば物語という布を織りなす縦糸で、横糸には細密な神話観、国の成り立ちや国家間の関係性といった歴史観、正しくその世界に生きていると感じられる登場人物たちの生き方、考え方などが、びっしりと織り込まれています。
そこには、ただ主人公二人の恋を成就させることが全てといった単調さはなく、その時代その状況に置かれれば、人は何をどう選択し、どう生きるか、といった人間性の探求のような深さがあります。恋愛ものがお好きな方は勿論、神話系、歴史系ファンタジーがお好きな方にも、きっと刺さるものがあると思います。
あと、主人公の兄弟関係および主従関係がとても素敵なので、そちらもおすすめポイントの一つです。個人的に、主人公の兄上が大好きです。

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