第8話 第八転生


 俺の目の前にはただ真っ白な空間が広がっていた。


 かろうじて空と地面の境界は見えるがそれもぼんやりとしている。


「どこだ!?ここは!!!」


 大声で叫ぶ俺の声は虚しくこだまする。


 なんでこんなことに!?一体どこなんだここは!!

 俺は必死に、記憶の糸を辿りよせる。


「お…思い出してきたぞ…!」



─────────────────────


 俺の名はIKUMI・KAL。

 地球の平和を守るため銀河警察に派遣されたごく普通の17の宇宙刑事だ。


 宇宙海賊スプ・ライトの悪の総帥マウン・テンデューを倒したその時、禁断の恋仲にあった敵の幹部オラ・ンジーナに後ろから刺されたのだ。どうも浮気がバレてしまったようだ…。


 最後の記憶は…倒れて意識が薄れていく俺の顔を、ペロペロと舐めているマウン・テンデューの顔!!


─────────────────────


「なんでお前が舐めるんだっ!!」


 怒りと同時に、不安と恐怖が襲ってくる。


「えっ」


「てことはひょっとして…」


「俺は死んで、ここは天国ってことか!?!?」



「否。煉獄なり」


 突然頭の中に甲高い声が響く。


「!?」



 キュポポーン!



 奇妙な音と共に突然目の前に、刀を差した浪人風の男が現れた。


「いくみ…だな?」


「うわあ!なんだお前は!」


「儂の名は九本斎」


「九本斎!?」


「うむ」


「なんなんだお前は!」


「そうだな…かつて無念の死を遂げた悪霊…と言って良かろう」


「悪霊!?」


 頭がこんがらがる。

 しかし、どうも俺が死んでしまったのは確からしい。


「煉獄、即ち天国に行く魂が一時待機する場所…」


 もはや俺の頭の中にこの男の言葉は入ってこなかった。

 俺は、死んだんだ…。


「安心せよいくみ…」


「転生するのだ…!」


「て…転生!?」


 転生。生まれ変わり。前世の記憶を持ったまま生まれ変わった人生を歩む…そんなことが出来るのか!?


「選択肢は…無かろう」


「する!もう一度、生まれ変わって幸せな人生を送って見せる!」


「それでは、行くがよい…」


 男の言葉と共に、俺は光に包まれ、意識が遠のく。



 俺は…転生して…今度こそ幸せな人生を送るんだ………。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る