第3話 第三転生


 俺の目の前にはただ真っ白な空間が広がっていた。


 かろうじて空と地面の境界は見えるがそれもぼんやりとしている。


「どこだ!?ここは!!!」


 大声で叫ぶ俺の声は虚しくこだまする。


 なんでこんなことに!?一体どこなんだここは!!

 俺は必死に、記憶の糸を辿りよせる。


「お…思い出してきたぞ…!」



─────────────────────


 俺の名はイクミ・カルベ。

 母なる大地ラムレシアの中心、パルドレナ王国に召喚されたごく普通の17歳の転生勇者だ。


 長い旅の末に魔王を倒したその時、仲間の裏切りに遭い一緒に召喚された剣士・カルノフに突然後ろから刺されたのだ。


 最後の記憶は…倒れて意識が薄れていく俺の顔を、ペロペロと舐めているカルノフの顔…。


─────────────────────


「うっわ!気持ち悪っ!」


 俺は思わず叫ぶ。

 なに舐めてんだアイツ!意味わかんねえ!


「えっ」


「てことはひょっとして…」


「俺は死んで、ここは天国ってことか!?!?」



「いや、ここは天国ではない。煉獄だ」


 突然頭の中に野太い声が響く。


「!?」



 キュポポーン!



 奇妙な音と共に突然目の前に、いかつい男が現れた。


「イクミ、だな?」


「うわあ!なんだお前は!」


「俺の名前は急歩本 本初」


「急歩本!?」


「うむ、しかし私を呼ぶ時は字の本初と呼んでくれ」


「名前なんてどうでもいい!なんだお前は!」


「ワシは急本初じゃぞおおぉ!」


 男は突然叫ぶ。そして何事も無かったかのよう話を続けた。


「お前たちの世界では天使と呼ばれる存在だ」


「天使!?」


 頭がこんがらがる。

 しかし、どうも俺が死んでしまったのは確からしい。


「煉獄とは、天国へ行く魂が一時待機する場所だ」


 もはや俺の頭の中にこの男の言葉は入ってこなかった。

 俺は、死んだんだ…。


「安心しろ」


「お前は世界を救った。褒美としてお前を転生させてやろう」


「て…転生!?」


 転生。生まれ変わり。前世の記憶を持ったまま生まれ変わった人生を歩む…そんなことが出来るのか!?


「どうする?」


「する!もう一度、生まれ変わって幸せな人生を送って見せる!」


「うむ、よかろう、それでは…」


「行けぃ生巳!去れぃ!」


 両の拳を天高く突きたて叫ぶ男の絶叫と共に、俺は光に包まれ、意識が遠のく。



 俺は…転生して…今度こそ幸せな人生を送るんだ………。

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