転生の日々

第2話 第二転生


 俺の目の前にはただ真っ白な空間が広がっていた。


 かろうじて空と地面の境界は見えるがそれもぼんやりとしている。


「どこだ!?ここは!!!」


 大声で叫ぶ俺の声は虚しくこだまする。


 なんでこんなことに!?一体どこなんだここは!!

 俺は必死に、記憶の糸を辿りよせる。


「お…思い出してきたぞ…!」



─────────────────────


 俺の名はイクミ・バーンシュタイン。

 ザルナキア王国領の都市ライナスの迷宮に挑んでいたごく普通の17歳の冒険者だ。


 探索が終わって帰る途中、西の回廊で異常発生したスライムの大群に遭いパーティは全滅の憂き目にあった。


 最後の記憶は…倒れて意識が薄れていく俺の顔を、ペロペロと舐めているスライムの顔!!


─────────────────────


「良かった!無事だった!」


 安心すると同時に、不安と恐怖が襲ってくる。


「えっ」


「無事?何言ってんだ俺は…」


「そんなことより、俺は死んで、ここは天国ってことか!?!?」



「違います。ここは煉獄です」


 突然頭の中に甲高い声が響く。


「!?」



 キュポポーン!



 奇妙な音と共に突然目の前に、女が現れた。


「こんにちはイクミさん」


「うわあ!なんだお前は!」


「私の名前は女神キュポポン」


「女神キュポポン?!?」


「はい」


「名前なんてどうでもいい!なんだお前は!」


「女神と申し上げたはずです」


「女神!?」


 頭がこんがらがる。

 しかし、どうも俺が死んでしまったのは確からしい。


「ここ煉獄は、天国に行く魂が一時待機する場所なのです」


 もはや俺の頭の中にこの女の言葉は入ってこなかった。

 俺は、死んだんだ…。


「でも大丈夫」


「スライムに顔を舐められたご褒美に、私の力で転生させてあげましょう」


「て…転生!?」


 転生。生まれ変わり。前世の記憶を持ったまま生まれ変わった人生を歩む…そんなことが出来るのか!?てかスライムに顔を嘗められたご褒美ってなんだ。


「どうします?転生なさいますか?」


「する!もう一度、生まれ変わって幸せな人生を送って見せる!」


「それではイクミ・バーンシュタイン、再び生まれ変わり、新たな人生を送りなさい」


 女の言葉と共に、俺は光に包まれ、意識が遠のく。



 俺は…転生して…今度こそ幸せな人生を送るんだ………。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る