第5話 第五転生


 俺の目の前にはただ真っ白な空間が広がっていた。


 かろうじて空と地面の境界は見えるがそれもぼんやりとしている。


「どこだ…ここは…」


 大声で叫ぶ俺の声は虚しくこだまする。


 なぜこんなことに?一体どこだ。

 俺は必死に、記憶の糸を辿りよせる。


「思い出してきた…」



─────────────────────


 俺の名はイクミ・トマソン

 シカゴ出身、ハーバードを飛び級で出てCIAの"犬"として活動していたごく普通の17歳のエリート諜報員だ。


 任務が終わり帰る途上、不用意に道路を歩いていた天使おんなのこを助けるため飛び出し、トラックにひかれたのだ。


 最後の記憶は…倒れて意識が薄れていく俺を、不思議そうに覗き込む天使の顔…。


─────────────────────


「ふっ…無事だったか…」


 安心すると同時に、不安と恐怖が襲ってくる。


「…」


「とういことは…」


「俺は死んで、ここは天国ってことか…」



「はっ!ここは"煉獄カーニバル"だよ!」


 突然頭の中に声が響く。


「?」



 キュポポーン!



 奇妙な音と共に突然目の前に、ふざけた格好の若者が現れた。


「おぉう?イクミぃ!?」


「…なんだお前は」


「オレの名前は"キュポポン"だよっおおぅ!?」


「?」


「"キュポポン"だっつってんだろ!?お前ドコ中だよ!?おおおぅ!?」


「?」


「オレはよぉ?おめーら風に言やぁ"天使ゴッド"ってやつだよ!」


「……?」


 どうも俺とこの若者とでは会話が難しいようだ。

 しかし、どうも俺が死んでしまったのは確からしい。


「ここはよぉ、"ぶっ"ンじまったヤツラがする場所なんだよ!」


 もはや俺の頭の中にこの若者の言葉は入ってこなかった。

 俺は、死んだのだ。


「でもな、"安心アンシン"しろよ!?」


でテメェを"転生リンカーネーション"させてやっからよ!?」


「転生…?」


 転生。生まれ変わり。前世の記憶を持ったまま生まれ変わった人生を歩む…そんなことが出来るのか?


「どうするよ?お?おおぅ!?」


「OK、やってみよう」


「んじゃ、ま、""ンでこい、イクミィ!?」


 若者の言葉と共に、俺は光に包まれ、意識が遠のく。



 俺は…転生して…今度こそ幸せな人生を送るんだ………。

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