どうしようもない感情の狭間で揺れる、誰かの物語。

自身の性欲と感情に揺れる「わたし」。
「わたし」から見た友人があまりに綺麗で、情景が美しくて。
だからこそ彼女が自分自身の情欲に葛藤する姿が沁みます。

難しい問題と起きてしまったこと。それらで重く立ち止まらせるのではなく、丁寧に編まれた文章が「わたし」を示す。どうしようもない、どうにもできない、それでもそこにあるぐずりとしたものを。

どうしようもない後悔と、丁寧に寄り添いながらある苦しみ、苦さ。
どうしようもない傷で重いけれど、でも読後感を嫌なものにさせない綺麗さ。
ぐずりと残るのに不快感はない。丁寧に編まれた文章が美しく、立ち止まり思考を馳せることになるような洗練とした短編である。

そっとページをめくるように、文字をなぞるように、思いをはせてほしい。

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