概要
あのひとに、いつか胸を張って会いに行きたい――。
貴族の屋敷で庭師見習いになった孤児の少年は、“女神様”と再会を果たす。
しかし、彼女が置かれた環境はあまりに過酷で……。
真面目で不器用な少年が、たったひとりの少女を守り、幸せにするまで。
※直接描写は避けていますが、性行為、性暴力が物語に出てきます。
苦手な方はご注意ください。
◆各章あらすじ◆
薔薇の屋敷のロマノフスカヤ編
薔薇が咲き乱れる貴族の屋敷で、庭師見習いの少年と“お嬢様”が出会うが……。
辺境のゲルバルド編
満身創痍で少女を助け出した少年に、意外な人物が手を差し伸べる。
ナギとユメリアと名乗り合い、ふたりは共に生きるための第一歩を踏み出す。
霧と煙のリュートック編
工業
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!これは、「ふたり」が共に生きる物語
その場所にあるのは、あまりに辛く息苦しい世界。
美しい文字がどうにもならない冷たさを綴る中で、それでも彼らの息遣いが聞こえてくるような、だからこそ拳を握るしかないような序盤。
苦しくて仕方なくて、けれども絶望し閉ざされてしまうには、愛しさも優しさも確かにあって――
ままならない世界で、それでも生きるために選び進む彼らは、失うだけではない。
過酷さもままならなさもはっきりと描かれている序盤ですが、タイトルが、そして思う人たちが、道を閉ざすには早いと教えてくれるでしょう。
ずっと苦しいだけではないのは、彼らが選んだあの日から進めばきっと伝わる。
過酷さも問題もあるけれども、確かにそこにある穏や…続きを読む - ★★★ Excellent!!!花の蕾が綻んでいくように、傷ついた心が開く
とてもシンプルなタイトルですが、読み進めると物語序盤でそのタイトルの意味が輝いて感じられました。
庭師の少年が屋敷で冷遇されている女性の心に寄り添い、そして彼女が「妻」になるのだとわかるからです。
序盤でわかりますが、どうしても報われない恋のはずが、どうやって? とも思いました。
やはりその展開は一筋縄ではいかず、手に入れたものもあれば失うものもあり、非常に苦しい時期もあります。
それでも二人が心を通わせ、共にいられる時間はささやかな幸せに溢れています。
花の蕾が綻んでいくように、傷ついた心が開いていく――。
季節の花々が彩を添え、静かに語られる心情が心に染み入る上質な物語です。 - ★★★ Excellent!!!希望という名の果実。蜜を滴らせて、互いの傷を癒やす
初めに書くと、この物語。本当に冒頭が辛いことで溢れていて。
読みながら、苦しくなってしまいます。
格差がある社会。
貴族と平民。
望まれない子。
渇望する愛情。
歪んだ支配。
純愛をお嬢様に捧げる少年。
文字通り、命そのものを捧げる覚悟で。
少年は行動を起こす。
ここにはチートもファンタジーもなくて。
残酷で冷酷な現実が嘲笑うけれど。
絶望しながら、諦めながら、
それでも。
生きる希望を教えてくれたお嬢様のために
少年は無我夢中で、行動を起こす。
物語はまだ途中。
希望という名の果実。蜜が滴らせて、互いの傷を癒やす
そう言うには、お互いが傷つき過ぎているけれど。
二人が幸せになっ…続きを読む