お互いに相手を意識している(片方は確実にベタ惚れ)はずなのに、もう片方に恋の自覚が全くない。
そんな二人の関係を、読者がハラハラしたりやきもきしたり「あらあらまー」と声を上げたりしながら見守る、ちょっと変わった可愛らしい異世界恋愛小説です。
グライベリード王国の姫、フィリオーネは王位継承権を唯一もつ存在でありながら、勉強嫌いとして国王の頭を悩ませていました。
そこで白羽の矢が立ったのが、この王国の臨時の宰相ライアス。彼の豊富な知識と教養、何よりグライベリードを深く想う心に興味を持ったフィリオーネは、彼を家庭教師に任命し彼から勉強を教わることになります。
勉強や日常のちょっとしたやり取りを通じてライアスが気になっていくフィリオーネ。
そしてライアスも聡明かつ愛らしい彼女に惹かれていきます。
ところが、自分の恋心を自覚しどんどん行動に移していくライアスに対して、あくまで「次期女王」と「宰相」としての関係性を崩さないフィリオーネ。
この感情が「恋」なのかすら気づいていない様子です。
仕事中の相手に差し入れを持っていったり、ダンスを踊ったり、風邪の時に看病をしたり、肩が触れ合ったり転びそうになったフィリオーネをライアスが抱き止めたり。
恋愛に発展しそうな瞬間は多々あるにも関わらず、お互いの気持ちをかき乱すばかりで、なかなか「相思相愛」になりません。
なんとも焦ったい二人なのですが、気品あふれる彼女たちのやり取りは優雅で時に微笑ましく、きっと皆様もこの二人の恋の行方を見守りたくなるはずです。
姫と宰相が過ごす十二ヶ月の結末。
是非見届けましょう!
グライベリード王国の王位継承者・フィリオーネ姫は勉強嫌い。
家庭教師を立て続けにクビにしたという。
しかし、それは仮の姿。
彼女はただ、お仕着せの退屈な勉強が嫌いなだけ。
本来は知的好奇心が旺盛で、姫としての自覚がめっぽう強いしっかり者なのだ。
そんな彼女の新しい家庭教師をおおせつかったのが、謎の宰相・ライアス。
彼はフィリオーネの知識より一段深い歴史を語り、お茶の時間には隣国の名産品についての知識を伝える。
そんなライアスの授業や、姫だからといって節度を崩さないところに興味を持ったフィリオーネ。
一方、ライアスもフィリオーネが気になる様子。
「順調に恋愛に発展するに違いない!」という読者の予想を裏切るのが、フィリオーネの「姫っぷり」。
ここでいう「姫っぷり」とは、「次期女王の自覚」のこと。
幼いころから次期女王の立場を自覚し、所作や振る舞い、知性まで自発的に磨いてきた彼女は、「ふつうの女の子」にあらず!
恋愛に疎いどころか憧れすらもっておらず、いつか次期女王として、政治を考えた結婚をすることを当然と考えている。
ライアスとの関係も、「いつか宰相として国にほしい人物」「彼を引き抜いた場合、ライアスの出身国との関係は?」と、次期女王モード全開。
しかし、時折「姫様、それは恋ではないですか!?」と言いたくなる心の動きもちらほら出てきていて……。
次期女王として鉄壁のしっかり者だけれど、時折見せる茶目っ気や奔放なところが愛らしいフィリオーネ。そんなフィリオーネに振り回され気味なライアス。
果たしてフィリオーネは恋心を自覚するのか。ライアスは彼女を恋愛モードにできるのか。
レビュー時点では、春の出会いから半年が経過。姫と宰相の12ヶ月、今後も目が離せません!