才を描くも才

才には様々な種類があり、世間一般に異常とされている行為も突き詰めれば才というわけですが、本作はそのことを如実に表していたように思います。焔と倒錯した情動を組み合わせるのは定番ではありますが、描写において本作は他と一線を画していました。読み進めるほどに違和や、恐怖の対象の変化に読者は驚くことでしょう。

文体についても近代文学をなぞらえた堅牢で深みのある味わいを内包しており、目の肥えた読者を満足させるに足るものとなっていると思います。一方でそうしたものに馴染みのない方は抵抗を持つでしょうが、ルビ振りもされていて読みやすく仕上がっていました。なので、そこまで苦手意識を持つ必要もないのかなという印象です。

一味違った短編ホラーを楽しみたい、重厚な物語を味わいたい、という方は是非とも読んでみてください。本作のテーマ、そして物語の意味を知ったとき、なんとも形容し難い読後感に包まれることは間違いないでしょう。

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