繊細な筆致でありながらも、しっかりとした情熱を感じさせてくれる力作です。緩急のつけ方はまさに一級品。オンオフの切り替えなんて生易しいものではなく、オンのときには感性が爆発しています。ありったけの力を込めて、言葉を叩きつける。淡々と書き進めて、墨が尽きかけてきた筆をそれでも振るい続ける。このときを待っていたと言わんばかりに。見せ場での、そんな粘り強く勇ましい文章表現の数々には圧倒されました。
ストーリー部分も素晴らしい。好きな人には絶対に刺さるであろう点を踏襲しつつ、本作でしか味わえない面白さや臨場感も用意されています。魅力的なキャラクターたちに、手強い敵たち、そして彼ら彼女らが織りなす感動と驚きのドラマ。たしかな技術と感性に裏打ちされた文章のおかげで、安心して読み進めることができます。堅実で面白い作品との出会いを探している人にとって、これ以上にふさわしい作品はないでしょう。
興味を持った方は是非、この非日常の世界に飛び込んでみてください。
またとない感動に心が躍ること請け合いです。