この物語は、本屋の検索システムというユニークな視点から、現代社会の様相を軽妙洒脱に描き出した作品だ。
主人公のケンサクくんは、読者の要望に誠心誠意応えようとする健気さと、どこか間の抜けた愛嬌を兼ね備えている。
ケンサクくんと個性豊かなタグちゃんたちとの掛け合いは実に微笑ましく、読む者の心を和ませてくれる。
一方で、読者の過剰な要求やシステムの不具合に翻弄されるケンサクくんの姿は、情報化社会の歪みを象徴しているようでもある。
娯楽小説の体裁を取りながら、現代人の深層心理を鋭く衝いている点が秀逸だ。
笑いと洞察に溢れた本作は、読後に爽やかな余韻を残す。
日常の些事から人生の本質を炙り出す著者の筆致は、まさに現代の寓話とも言うべき快作だろう。
今日ここに来た私はある本を探していてね。
驚異の検索力、見つからないものなんてないと評判である、本屋のケンサク君を尋ねたって訳だ。
そうだね、早速だが一風変わった作品の検索をお願いします。
えっと検索ワードは…。
#HAHAHA! #異世界ファンタジー #魔王 #前世の嫁 #関西弁を喋るドイツクォーター #高身長女子 #あらフォウかもんべいべ
どうだろう? そんな作品ってあるのかい? HAHAHA! あるわけないよな?
HAHAHA!……え? あった!?
おいおい、こいつは参ったぜ?
どうやら彼の評判は本物のようだね?
お見事だケンサクくん、どうもありがとう。HAHAHA!
そんな彼らの日常(?)の物語を追っていけば、素晴らしいアイデアやキャラクター達に出会えて楽しいひとときを過ごせる事を私が保証するよ! HAHAHA!
さて、次はどんな作品を検索しようか? ケンサクくん、他にはなにがオススメかな?───。
本屋の検索システムのアバター、ケンサクくんは、今日も読者様のご希望に沿った本を探します。たまに出る、無茶なご依頼も大丈夫。タグちゃん達と一緒に、必ずお目当ての本を探してくれることでしょう。
擬人化したタグちゃん達は、そのタグならではの個性に溢れています。そんなタグちゃん達に振り回されつつ、ケンサクくんは次々とお題をクリアしていきます。
そう、お題……。各話ごとのタイトルを見て、「あっ」と思われた方、正解です! こちらの作品は、KAC2023のお題から生まれた短編集なのです! 作者様の工夫と発想力には、毎回とても驚かされます。
このレビューを目にされた方も、ぜひ検索——じゃなかった。ぜひ、読んでみてください。
3日に1度の運営様からの鬼の出題に応えるべく創り出されたストーリーは
なんと、キャラクターではなく、彼らを表わす『タグ』自体が擬人化した物語でした!
軽妙な語り口が心地良い作者の文章に乗せられ、人でない不思議な生き物『タグ』ちゃんたちが、自由に動き回り物語を展開……いや、掻き回します。その中に、一貫して見えるのは主人公ケンサクくんの苦労する姿。
彼は、追いかけられ、悩まされ、振り回されているのに、最後はちゃんと締めてくれる長さんの様な安定したまとめ役なのです。そんな、万人に愛される典型的な「だめだこりゃ」展開を全話通して楽しめるお話です。
来年のKACも、ここに新たな1ページが刻まれることを期待しております。