第3話 魔女の本屋

 魔女の本屋に行きたいのなら、まだ西の空に月の姿が見える時に、太陽が目を覚ます前に起きなさい。

 夜と朝が混ざり合う時だけに、魔女の本屋への道は開かれる。

 村を出たら真っ直ぐ北へ向かうんだ。村の北のアルバの森、その何処かに魔女の本屋がある。

 振り返ってはいけないよ。道が閉ざされてしまうから。

 森の中へ入ったら、「魔女様の御本が読みたいです」と、大きな声で三回唱えなさい。

 もしその声が魔女の耳に届いたら、あなたの目の前には赤い花妖精がいるはずだ。

 花妖精のことは知っているね? 人の拳ぐらいの大きさで、頭に色とりどりの花を咲かせた魔物だよ。背中には虫のような薄い羽があって、花びらのドレスを着た若い娘の姿をしているはずさ。

 怖がることは無い。花妖精は無害な魔物だ。それに、赤い花妖精は魔女の友達なんだよ。

 あとはもう大丈夫だ。花妖精が魔女の本屋まで案内をしてくれる。あなたは彼女の後をついて行けば良い。


 ――――東の大陸、ジバ村に伝わるおとぎ話『魔女の本屋』

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