第5話 封印の物語
【聖王アルベルトの冒険】
賢明なる読者諸君も既にご存知の通り、聖王アルベルトは正に男の中の男、男が惚れる男、男が目指すべき男である。常に冷静で論理的、物事を客観的に見ることができる彼は、当然の結果として正義の神アスタの寵愛を賜ることとなった。彼の類稀なる魅力は多くの善男を虜にするだけでは留まらず、邪悪な魔女の中に正義の心を目覚めさせたほどである。
全ての男の目標となった聖王アルベルトは、数え切れないほど多くの冒険を乗り越えてきたが、最も有名な冒険はやはり「魔王封印」だろう。
世界を滅ぼす魔王を、全ての善男が憧れる男の中の男、正義の神アスタの寵愛を賜わる聖王アルベルトが封印したのである。
彼の実に男らしい勇敢な行いによって、この世界は救われたのである。
(全然だめ。男、男、男ばっかり。具体的なことはなんにも書いてない)
【封印された魔物達】
魔王··········百年に一度、目覚めの時を迎え、世界を滅ぼそうとする魔物達の王。正義の神アスタに見出された勇者や聖女により、目覚めの時を迎える度に再度封印を施されている。魔王が完全に目覚めた時、世界は完膚無きまでに破壊され、絶望の闇が地上を覆い尽くすだろう。
マガイモノ··········東の大陸に棲息する魔物。無惨な死を迎えた人間の魂が魔物の死骸に宿ったものである。死骸に宿った魂からは人間の理性は失われ、最期の怨念だけが残っているのだという。その姿形は、マガイモノの魂として選ばれた魔物に依存する。魔犬の死骸であれば魔犬の姿に、竜に宿れば竜の姿になる。肉体は既に死を迎えているので、武器や魔法による攻撃が通用しない。彼らに有効なのは、神聖魔法による攻撃のみである。マガイモノとなってまだ日が浅いうちであれば、神聖魔法による破壊が可能だが、穢れきった魂を救うことは不可能である。身体を喪った魂は、すぐに別の魔物の死骸に乗り移るのだ。被害を防ぐためには、マガイモノの魂を死骸ではない物の内に閉じ込め、封印をするしかない。
(どうやって封印したんだろう。それが一番大事なんじゃないの?)
【生贄姫と封印の城】
「わたしのいのちをささげれば、みんなをたすけてくれるのね」
ひめはしずかにそういいました。おつきのめしつかいたちは、ぽろぽろとなみだをながしています。
みんな、ひめにしんでほしくはないのです。けれど、だれかがぎせいにならなければ、もっとかなしいことがおきてしまうのだと、みんなしっていました。
「わかりました。わたしがいけにえとなりましょう。だからほかのひとにはてをださないで」
おそろしいまものや、じゃあくなまじょたちがすむふういんのしろ。
だいすきな、たいせつなくにのひとたちをまもるために、ひめはひとりでゆくのです。
(馬鹿しかいないの、この話には)
【神聖魔法大全 第百五十巻 中】
本項目では、正義の神アスタに仕える神聖騎士に必須となる、魔物を封印するための封印の魔法について解説する。邪悪な魔物と相対するためには、常に冷静沈着で居る必要がある。本書をここまで読み通してきた善男であれば、神聖魔法大全第三十六巻第五十八章に記載した『正義の精神』については既に体得しているものと心得る。邪悪な魔物から人々を守るために、この『正義の精神』が必要不可欠である。
図1に示した通り、『正義の精神』から生み出された『正義の力』を練り上げる。正義の神アスタが邪悪なる者を正義の光で浄化した場面を思い浮かべるのだ(※神聖聖書第八百六頁『光リ輝クアスタハ全テノ善男ヲ従ヘテソノ正義ノ光ハ愚カモノタチノ目ヲ灼キ邪悪ナル者ドモ企ミハ露ト消ヘタ』)。
『正義の精神』から生まれた『正義の力』は、邪悪なる者を縛り上げるための鎖となる。図3に示した『清らかな石』と邪悪なるものを鎖で繋げ(※神聖聖書第八百七頁『哀レナリ邪悪ナルモノ正義ノ光ヲ照ラサンコノ慈悲ハ正義ナレバコソト人々ハ喜ビノ声ヲアゲ』)
(わ、わかんない……全然わかんない……)
【初心者のための魔法 第七巻】
【悪いものを閉じ込める方法】
【あなたにもできる! 魔法の教科書】
【誰が封印を解いたのか】
【災厄から身を守るために】
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