第11話 夜明け

 夜が明けた。

 玄関の扉を閉めて、窓を分厚いカーテンで覆っても、家の外で異変が起きていることはわかっていた。

 時おり響き渡る耳をつんざく悲鳴。泣き声混じりの喚き声。重い物がどこかに叩きつけられる鈍い音。

「大丈夫。アランナ様が何とかしてくれる。約束したもの。大丈夫」

 こんな状況で、眠れるわけがない。

 ミレイはフレタと共に部屋の隅で丸くなり、ただひたすら早く夜が明けることを願っていた。

 ―――大丈夫。夜が明けたら全部片付いているから。だからそれまで、大人しくお留守番だ。

 アランナはそう言っていた。だから夜が開ければ、朝にさえなれば、全てが上手くいくはずだった。

 そして、その朝が来た。辺りはしんと静まり返っている。夜中の狂乱が嘘のようだった。

 おそるおそる部屋から出る。そっと玄関の扉を押し開けて、ミレイは外の様子を伺った。

「あ…………あああ、あああああ」

「そんな、そんなぁ」

「終わりだ…………もうおしまいだ…………みんなダメになるんだ」

「イソトメさま、ああ、イソトメさま、イソトメさまぁ」

 ジバの村の住人達が、あちらこちらに座り込んでいた。

 乾いた笑い声を上げる者や、白髪頭を乱暴に掻きむしり続ける者、ぼろぼろと涙を零しながらイソトメを呼び続ける者。反応は様々だが、誰一人立ち上がろうとはしなかった。

 己の足で立っていたのは、ミレイと――――黒衣の魔女だけ。

「やあ、ミレイちゃん」

 うちひしがれる村人達には目もくれず、魔女アランナはミレイの元へと真っ直ぐにやって来た。

「約束通り、夜のうちに片付けたよ。イソトメは封印した。君達が生贄になることはない」

 アランナが、ふわりと笑う。

「もう大丈夫だよ、ミレイちゃん」

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