とても優しくて心温まる、素晴らしいネコチャンヒューマンドラマでした。
物語は、仕事で悩みを抱える主人公・康平が、『幸運を呼ぶ猫』の噂を聞き、半信半疑でその猫に会いにいくところから幕を開けます。
幸運の猫・ブチ。ブチを可愛がる女子高生・泉美。ブチの飼い主の小学生・秀樹。噂の公園で彼らと出会ったことで、康平の人生は風向きを変えていきます。
当のブチは人の膝に乗ったり、おやつをもらったりと、とにかくマイペース。
だけどなぜだか危険な目に遭いそうな人を救ったり、悩みを抱える人に解決のヒントをくれたりなど、関わった人の運気を変えるような不思議な力を持っています。
登場人物たちの抱える悩みにリアリティがあり、中には胸の締め付けられるような展開もありました。
人間関係の描き方がとても丁寧で、きっと共感を覚える人も多いことでしょう。
ブチの意外な活躍とも相まって、解決のシーンでは気持ちいいほどのカタルシスを感じられます。
ブチとの出会いをきっかけに、どんどん繋がっていく人の輪。そして、それぞれが見出した前へ進む道。
読了後、私自身も前向きなパワーをもらえました。爽やかな読後感でした。
日々に疲れた人にこそ読んでほしい、癒しの物語です。
仕事が何かと裏目に出てつらい毎日を送る康平君。
そんな彼の前に現れたのは幸運を呼ぶ猫『ブチ』。
そんな偶然の出会いから、灰色だった康平君の心に鮮やかな色が戻ってきます。
その色を取り戻すのはなにもブチだけの力ではありません。
ブチとつながっている人たちとの出会いが、優しい人たちとの触れ合いが、康平君の心の滓を流していきます。
康平君にしたっていろいろと躓いた理由があります。
それは自分の弱さだったり些少さだったり。
関わる人たちだって皆が清廉潔白な人ばかりではありません。
それでもブチとのかかわりを通して、まるで視界が開けてくるように、さわやかな風が吹き抜けてゆくのです。
そして最後の最後のエピソードが実に良いんです。
人を変えることはできない、変えることができるのは自分自身だけ。
ここに気づけるかどうかは人生ですごく大事なことだと思います。
と、まぁいろいろな想い、感想がじんわりと沸き上がる、素敵な物語でした。
ぜひ読んでみてください。
ブチのモフモフした手触りを想像しながら……
僕はこの物語を読んだ時、その表現力の素晴らしさに、鮮やかに心を奪われました。
例えば山田洋二監督の映画作品をご存知の方には伝わりやすいかと思いますが、どこにでもいる「市井の人々」を魅力的に描く事が如何に難しいか、僕の中では一つのテーマとして存在している重要事項であります。
この物語は特別な能力や、破天荒なキャラクターが登場するわけではありません。普通にどこにでもいる「市井の人々」が、「少し特別なねこ」と関わる物語です。
その「市井な人々」である普通の登場人物達を、如何に魅力的に見せるのか。ここにおいて、作者様の誠実で深みのある筆力が惜しげもなく発揮され、読む者は思わず魅了されてしまうと思います。
物語において人間をしっかり書くと言う事は、常日頃より本の世界以外での実体験を多く積んでいなければ書けないと思います。
ましてや「市井の人々」を魅力的に表現すると言う事は、文学では取り上げられない「取るに足らない悩み」を持つ人々に対し、如何に深い愛情をもって、慈しみ優しく接するという姿勢を多く積み重ねていなければ、絶対に表現出来ない世界なのであります。
こちらの作者様は恐らくそういう方であり、この物語はその優しさが溢れんばかりにその表現に深みを与えております。
それは驚く程自然に、そして驚く程鮮やかに。
だからこそ僕はこの「優しい物語の世界」に、あっという間に引き込まれてしまったのです。
お勧めさせて下さい。
物語に魅了されるとは、こういう物語を指して言うべきではないのかと強く思います。
どうか皆様、宜しくお願い致します。
柔らかで優しい毛並みに触れたような、至極のモフモフに包まれたような、心地好い読後感です。
駅に近い公園。それはご近所さんだけではなく、様々な人が交叉する場所です。そこに、不思議なニャンコがおりました。巷間囁かれる幸運の猫ブチちゃんです。
始まりは、登場人物のちょっとした悩みを解きほぐすかのような、少し不思議で軽やかな日常の物語に見えます。しかし、そうではありません。切実な問題もあれば、訴訟に発展しなねない事件も出てきます。
健やかに日々の生活を送る近隣の住民。私たちが毎日、すれ違う人たちでもあります。どんな悩みや苦労があるかなんて考えもしません。でも、違います。実は、不安の種を抱え、独りで苦しんでいる人も少なくないのです。
そうした悩める彼ら彼女らを、猫ちゃん&取り巻きの人々が巧みに助け出します。スパッとサクッと成敗。しかも単なる問題解決に留まらない心の救済です。
救い、救われ、そして救われ、救います。
読んでいて嬉しくなる、心和む優しい人たちの輪。その真ん中にいるブチちゃんは何らや気持ち良さそうに喉をゴロゴロ鳴らしています。ヒロイックな大活躍をしているのに、のほほんとしています。気取らず、気張らないのが愛らしい。
でも、まだまだ悩める人々は尽きないようです。手を差し伸ばして、新たな問題に取り組む姿勢をちらりと見せる…余韻を残し、予感を与えるエンディングも素晴らしいです。
20代の会社員『山田康平(こうへい)』は、好きだったはずの仕事でモヤモヤを抱えている。
半信半疑というより疑い99%で、幸運を呼ぶと噂の猫『ブチ』に会いに行く。
するとブチをきっかけに縁がつながり、女子高生と小学生男子の友人ができた。
職場とは違う人間関係ができた康平は、異なる角度から物事を見られるようになり、仕事との向き合い方を見直すことができるように。
ブチがちょっとしたハプニングから、刑事事件に発展しかねない大騒動まで、大小さまざまな事件を解決(?)してゆく物語。
それは果たして偶然なのか、それともブチが意図して取った行動なのか!?
ただ確かなことは、ブチのおかげで関わった人々が幸せをつかんでゆくこと。
老若男女さまざまなキャラクターが生き生きと描かれ、読みやすく丁寧な筆致が心地よいです。
不思議な猫の大活躍、ぜひ読んでみてください。
人に幸運をもたらすと噂されるネコ、『ブチ』と、悩めるサラリーマンの康平さんの出会い。
そこからネコを愛でてやまない女子高生や少年たちが現れ、年齢も職業もバラバラのみんなが『ブチ』繋がりで交友を広げていきます。
どこにでもあるような光景のリアリティに、ブチ(しかも人懐っこい)の存在が、なんとも言えないほっこり感を漂わせています。
ただ、そんな登場人物たちに事件が。人間の陰の部分を見たブチの取った行動は?
すっきりした無駄のない筆致で、文章は本当に読みやすく、最初から最後まで楽しめます。
そして、ブチに会ってみたくなることでしょう。
素晴らしい読書時間をありがとうございました!
この物語のように、猫が人を守ることがありえるだろうかという件;
鳥獣の脳の重さと体重から賢さを割り出す公式・脳化指数(EQ)というものがあります。
[EQ] = [定数] × [脳の重量] ÷ [体重]2/3
これによると、鶏0.25、牛0.5、ライオン0.6、馬0.9、猫・雀1.0、犬1.2、烏1.25、チンパンジー2.2、バンドウイルカ 5.3、人間7.5前後となります(wiki)。
猫は、ポーカーフェイスな個体が多く、つかみどころがないですが、案外と賢く、ソロで狩りをする場合、地上最強とも言われています。
結論;
下記に示す「熊に勝つ猫」という動画があります。登場する猫は飼い主家族を熊から守っている。ゆえに、この物語のケースはあり得ます。
参照動画;
https://www.youtube.com/watch?v=txzn9AEk1Cw