幸せの招き猫は優しさも潤いも運びます

柔らかで優しい毛並みに触れたような、至極のモフモフに包まれたような、心地好い読後感です。

駅に近い公園。それはご近所さんだけではなく、様々な人が交叉する場所です。そこに、不思議なニャンコがおりました。巷間囁かれる幸運の猫ブチちゃんです。

始まりは、登場人物のちょっとした悩みを解きほぐすかのような、少し不思議で軽やかな日常の物語に見えます。しかし、そうではありません。切実な問題もあれば、訴訟に発展しなねない事件も出てきます。

健やかに日々の生活を送る近隣の住民。私たちが毎日、すれ違う人たちでもあります。どんな悩みや苦労があるかなんて考えもしません。でも、違います。実は、不安の種を抱え、独りで苦しんでいる人も少なくないのです。

そうした悩める彼ら彼女らを、猫ちゃん&取り巻きの人々が巧みに助け出します。スパッとサクッと成敗。しかも単なる問題解決に留まらない心の救済です。

救い、救われ、そして救われ、救います。

読んでいて嬉しくなる、心和む優しい人たちの輪。その真ん中にいるブチちゃんは何らや気持ち良さそうに喉をゴロゴロ鳴らしています。ヒロイックな大活躍をしているのに、のほほんとしています。気取らず、気張らないのが愛らしい。

でも、まだまだ悩める人々は尽きないようです。手を差し伸ばして、新たな問題に取り組む姿勢をちらりと見せる…余韻を残し、予感を与えるエンディングも素晴らしいです。

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