第12話 シノノメ/夜明け前の海へ向かって自転車に二人乗り

○海・海岸・明け方

   #波の音が遠くに聞こえる。


「とうちゃーく……ってうわ、明け方の海って本当に暗いんだ!」

「なんにも見えないけど、音だけはすごいわね。」


   #ぶわっ! と海風が吹き抜ける。

   #髪があばれて前が見えなくなってしまった薫。


「うわぁ! ちょ、風強すぎ!」

「あぁ~髪の毛がえらいことに~。なんにも見えない!」

「……え、ちょっと、なに笑ってるの?」


「《保護されたトイプードルみたい》……?」

「あのねぇ~!」


   #ぶわっ! と海風が吹き抜ける。


「あぁもう、うっとおしい! ちょっと待って、ヘアゴムヘアゴム……」


   #薫、ヘアゴムを使ってポニーテールにする。


「後ろをしばって、これでよし……と。お待たせ。」

「……どうしたのよ、今度はボーッとして。」

「《ポニーテール、すごく似合う》?」


「はいはい、褒めてもさっきのトイプードルはチャラにならないから。」


   #主人公、ポニーテールへの思いを熱く語り。


「え……ちょっと待って、あんたそんなにポニーテール好きだったっけ?」

「そうなんだ……じゃあ、今度デート行くとき、やってあげてもいいわよ。」

「そんな、泣いて喜ぶほどのこと?」


「ふふっ、あんたってホントわけわかんない。」


   #ざばーん、と海の音、遠くに。


「ん? あぁ、《なんで海に来たのかって》? なんとなく。」


   #自分の中のもやもやを払おうとしているものの、まだ少し悩んでいる様子。


「海を見たら、なんかすっきりするかなって思ったんだけど……」

「いや、まだ遠いからね。というわけで、このまま砂浜へゴー!」

「無茶でもなんでもいいの! とにかく行く!」


   #自転車で走り出す音。



《第13話へ続く》


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『ASMRボイスドラマ アマガミ Vol.5 棚町薫編』(CV・佐藤利奈、CV・門脇舞以、CV・今野宏美、CV・阿澄佳奈)

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