第13話 シッソウ【ASMR】/後ろに薫を乗せて海辺へひた走る

○海・海岸・明け方


「いけいけー!もうすぐ夜が終わっちゃうわよ!」


   #砂浜を走る自転車がガタガタと揺れる音。


「きゃっ!」


   #主人公に抱きつく薫。


「ちゃんと走ってよー!」

「(笑いながら)違う!違う!」

「首を絞めてるんじゃなくてハグしてるのよ、バーカ!」


「んー、風がめっちゃ冷たいけど、気持ちいいー!」


   #遠くでは波の音。

   #近くではきこきことゆっくりとした自転車の音。


「(つぶやき)……意気地なし。」

「別に、何も言ってないし。いやホントに。」

「(つぶやき)せっかく一晩中いっしょにいたっていうのに……」


   #薫、気持ちを切り替えるためにひとつ大きく息を吐いて。


「でも、てんきゅね。一晩中いっしょにいてくれて。」

「意気地は無いけど、男らしさはある。弱味につけ込まないとことか!」

「だから……これはお礼。」


   #耳元にキスをする薫。

   #それに驚いて急ブレーキをかける主人公。ふたりともずっこけて落車。


「きゃっ! いててて……なんなのよ、もう! 急ブレーキなんてかけるから!」

「《急にキスするほうが悪い》!?」

「それはそうかもだけど……」


「ごめん……」

「いつも噛んでるし、耳にキスしたらそんなに驚くとは思わなかった……」

「……我に返ると、なんかとっても小っ恥ずかしいことをしたかも……」


   #ざざーん、と波の音。


「空、少し明るくなってきた。……あぁ、家に帰りづらいなぁ……」


   #主人公、ここでお母さんに会いたい、と言い出す。


「え? ねぇいま、《お母さんと話がしたい》って言ったりして……ないわよね?」

「ホントにそう言ったの!? なんでよ。」

「(茶化して)あ~、ひょっとして『娘さんをください!』とか言い出すワケ?」


   #主人公、薫も含めて進路相談をしようと言い出す。


「進路相談……?」

「あたしと、あんたと、お母さんで? 急にどうして?」

「……まぁ確かに、あたしとお母さんのふたりで話したら、またケンカになるだろうけど。」


「《自分の将来に関係することだし》。はぁ、なんであんたの将来に関係が……え……ええっ!? それって!?」

「お、驚くに決まってるでしょ!?」


「まったく、意気地なしかと思ったら急に大胆になるの、ホントに驚くからやめてよね……!」

「……でも、うれしい。マジでめちゃくちゃうれしい!」


「じゃあ約束。3人で話、しよう。」

「えへへ……てんきゅね。」

「あ……! 見て、日の出! 綺麗……」


   #ざざーん、と波の音。

   #薫、主人公の顔を見て吹き出す。


「なんかいいことありそうね! ……ぷっ!」

「ご、ごめんごめん……」

「でもあんた、顔が砂まみれだし……! 顔からいったから?」


「あぁ~こすらない。動かないで、砂、はらってあげるから。」

「ここと……これで……よし。」

「……ね、キスしたい。」


   #薫、突然キスをする。


「ん……」


   #そのままハグをする薫。


「大好き」



《第14話へ続く》


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『ASMRボイスドラマ アマガミ Vol.5 棚町薫編』(CV・佐藤利奈、CV・門脇舞以、CV・今野宏美、CV・阿澄佳奈)

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