第4話 トックン【ASMR】/薫のマッサージ練習に付き合うことに

○輝日東高校・校内・保健室・放課後


「じゃああたしもベッドの上にのって……と。」


   #ギシ、とベッドが鳴る。


「で、どこがこってるの?」

「……目と肩? あー、ゲームのしすぎねー、分かる分かる。えっと……」


   #本をめくる音。


「首の付け根を押さえて、こめかみを揉めばいいのね。じゃあさっそく。」


   #薫、主人公の首を揉み出す。


「お客さんこってますね~。こんなにこってる人はじめてですよ!」

「……どう、なかなか様になってるでしょ?」

「で、このまま腕回りを揉んでいくわね。」


「よいしょ……(つぶやき)へー、腕、意外とがっしりしてるんだ。」

「こんなもんで……いいかな。じゃあ、次はうつぶせ。」


   #シーツの衣擦れの音。

   #本をめくる音。


「えっと、腰回りのツボは……ここ?」

「……あ、痛い? じゃあ効いてるってことか。あたし才能あるかも。」

「それじゃ続けて、背中を……さすがに固いわね。ん、しょ!」


   #背中をマッサージしていく薫。


「ね、どんな感じ? 《普通に気持ちいい》?」

「え~、もっとこう、最高だ~! とか。」

「昇天しそう~! みたいな感じじゃないの?」


「え? 《薫程度のテクニックじゃ効かない》ですってぇ~!?」

「言ったわね……絶対に気持ち良くさせてやる……そうだ!」


   #薫、主人公の背中に覆い被さる。


「もっとすごいこと……してあげる♥」


   #シャツをめくる衣擦れの音。


「は~い服脱いで~。」

「シャツの上からじゃ効果薄いみたいだし~。」

「もっとダイレクトにしてあ・げ・る。」


「いくわよ……こちょこちょこちょ~!」


   #脇をくすぐりだす薫。


「ほら、ちょっと脇をくすぐられたぐらいで暴れない!」

「これもマッサージだから! 多分だけど。」

「ふふ、よいではないかよいではないか~!」


   #特別くすぐったいところに触られて反応してしまう主人公。


「おっ、なんかすごいいい反応のところが!」

「ここね? ここなのね!? うりうりうり~!」

「あははっ! こら、暴れない……きゃっ!」


   #ドスン、という音。

   #暴れ回っているうちに、主人公と薫の位置が逆(主人公が押し倒す)形になる。


「あいたた、頭打って……えっ、なんであたし、いつのまにかあんたの下に!?」

「これは……形勢逆転ってやつ? 大ピンチ!」

「あはは……ね、さっきのはちょっとした遊び心ってやつだから!」


「だからほら、どいて欲しいなって……」

「あー、これは結構怒ってらっしゃる。」

「そうよね……ごめん! ほんとーにごめん! だから機嫌直して! ね?」


   #主人公がどかないことで本気だとわかり、ドギマギしだす薫。


「……ねぇ、どいてよ。」

「そんな、少し胸触られたぐらいで、そんなマジな顔しないでよ……」

「……こんなとこ、誰かに見られたら誤解されちゃうじゃない。」


「……別に、誤解されちゃうの嫌ってわけじゃないけど、そういうことじゃなくて……」


   #何かを期待するようなトーンの薫。


「…………あのね、あたし……」


   #コンコン、とドアのノックの音。


「! まずい!」


   #がばっ、とかけぶとんをかける音。

   #ここから薫、ささやきで。

   #ふとんをかぶっているので、紗江の声や足音はこもって聞こえます。


「なんで覆い被さってるのよ! 見つかったらマジでヤバいじゃない!」

「そりゃ、ノコノコ出て行くわけにはいかないけど!」

「あぁちょっと、あんた重たいのよ……!」


   #扉を開ける音。


紗江

「失礼します……」


「入ってきた! ちょっと、バレるから息しないで!」

「無茶でもなんでもいいから!」


   #紗江の入ってくる足音。

   #薫、息づかい荒く。


紗江

「先生、いないのかな……絆創膏を1枚、もらっていきたいんですけど……」


「早く持ってっちゃって!」


紗江

「何か書いたりしなくていいのかな……」


「いいから早く~!」


紗江

「あとで言えばいいか。それじゃ、失礼します……」


   #扉を閉める音。



《第5話へ続く》


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『ASMRボイスドラマ アマガミ Vol.5 棚町薫編』(CV・佐藤利奈、CV・門脇舞以、CV・今野宏美、CV・阿澄佳奈)

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