第3話 ホウカゴ/珍しく薫が真面目に本を読んでいるぞ

○輝日東高校・校内・教室内・授業中

   #板書の音やペンを走らせる音。

   #薫は隠れて本を読んでいる。


「ふむふむ……手首の使い方が大事と……あとツボはここね……」

「放課後のチャイムの音&ざわざわとした生徒達の声。」

「えっと、ここをこうして……押す。」


「そして……力を入れて……ぐりぐり! うーん……」

「え? 《授業中なのに何してたんだ》って……見てわからない?」


   #全然わからん、という主人公。


「付き合い長いんだからそれぐらい察してよー。」

「えっと、あたし、お母さんのこと話したでしょ?」

「そう、うち、母子家庭ってやつで。」


「だから自分で遊ぶ分のお小遣いぐらいファミレスのバイトで稼いでるんだけど」

「えー? 全然すごくないって。すくなくとも勉強よりは楽しいし。」

「《見た目によらずしっかりしてるね》って……」


「あんたは一体どういう目であたしを見てるの~?」


   #あわてて話を元に戻す主人公。


「あぁそうだった。」

「話を戻すと、毎日がんばってるお母さんのために何かしてあげたいなーって。」

「だから……じゃん!」


「『これさえ読めば誰でもらくらく! 快調マッサージ!』」

「この本で勉強して。」

「お母さんにマッサージをしてあげよう……と思ったんだけど……」


「正直、本だけじゃぜんぜんわかんないのよね。」

「そう、人にやらないとこう、コツとか掴めないのよ。」

「だからさっき恵子に練習台になってもらったの。」


「《だからさっき連行したんだ》って失礼ね! ちゃんと同意の上でよ。」

「まぁ、ちょっと嫌がられたけど。」

「でも、恵子ぜんぜん肩とかこってなくて、練習にならなかった。」


   #なら、自分が練習台になるよ、という主人公。


「……え? 練習台になってくれるの!? ホントに!?」

「あ……ていうか。」

「マッサージってことでなんかヘンな想像してないでしょうね~?」


   #誓ってない! という主人公。


「あははっ! 冗談よ。」

「そんなマジな顔しなくても分かってるって。それじゃあ、お願いしちゃおうかな。」

「というわけで、行きましょ。どこへって、もちろん保健室よ。」


○輝日東高校・校内・保健室・放課後

   #保健室に入ってくる主人公と薫。


「お、誰もいない~ラッキー。」

「なによ~平気だってば、バレなきゃ問題ないでしょ?」

「いいから早く上着脱いで座って。」


   #上着を脱ぐ衣擦れの音。


「はいオッケーね。じゃあ座って。」


   #ぎぃ、と椅子が鳴る音。


「あぁ違う違う、椅子じゃなくてベッドに座って。」

「でないとマッサージできないじゃない。」

「……なによ、今さらナシとか言わないでね。ほらほら、ベッドに移動して。」



《第4話へ続く》


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