激しい愛の奔流を描き切った意欲作

可憐な転校生にドキマギして驚いたり、不思議がったり…始まりは、平穏な青春物語の断章にも見えます。

しかし、歪んだ愛のフォルムが徐々に輪郭を成し、読者はただならぬ気配を察知することでしょう。二人の心は平穏とは程遠いものだったのです。

学校、家族、環境。真っ直ぐな心には酷く歪んで見え、到底、受け入れられるものではありません。

断崖は、愛の在処と外の世界の端境を象徴するものです。一歩踏み出した先には何があるのか? 

気の迷いでも、蛮勇でも、ましてや愛の絆を確かめる為でもなく…その先で、差し伸ばした手はしっかりと掴み取ります。限りなく純粋で、豊穣で、芳しい、本当の愛のフォルム。歪んだ合わせ鏡に映ったものは、純粋で美しい愛の結晶…

是非、多くの方に賞味して頂きたい意欲作です。

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