素敵な声

朝吹

素敵な声

(お題)

 『バレンタイン当日。Aは学校で男女問わず、義理チョコを配った。同時に、配った数と同じくらいたくさんのチョコを貰った。それから1ヶ月後のホワイトデー当日。Aは学校から姿を消すことになる。…一体なぜか?』(100字)


・400字程度であること。

・Yes/Noの質問で辿り着ける内容であること。

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 順番を待つ間も、生徒たちは「誰がやったのか」を囁きあっていた。始まった取り調べにわたしは素直に応えた。

 大容量のひとくちチョコを購入しました。立方体で、セロファンで個別包装になっていました。


「チョコクッキーも可だって」

 クラスの義理チョコ交換会。チョコ1粒×人数分しか用意しなかったけど、他の子も同じようなものだった。とくに男子は母親が買って来た徳用袋のお菓子を無造作に配るだけ。みんなその場でぽいぽいと口にした。

 一年前、わたしの差し出したチョコを「受け取れないよ」と突き返したあなた。その声が好きなの。唄えば誰もが聴き惚れた。豊かに響く素敵なバリトン

 一か月後の十四日、この日は海外留学をかけた声楽コンクールの最終選考発表日。

 漆を塗ったチョコで口腔が荒れたことくらい、たいしたことなかったはずよ。わたしの荒れたこの心に比べれば。

 これから毎年この日には、大賞を逃した痛みと共にあなたはわたしを想い出す。きっとね。だからわざわざホワイトデーに自首するの。

 これで、あなたはわたしのことを忘れない。

 


 [了]





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素敵な声 朝吹 @asabuki

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