服についた手形

 『初めて書いた』が聞いてあきれる。相当な使い手が何回も推敲して書き上げたとしか思えない。素人のはずがない。さもなくば、当節流行の無自覚系だ。作者自身が。

 作中、ああした存在をそう呼ぶのは、無知にして初めて知った。あたかも刺繍でいうクロスステッチのごとく、二人の気持ちが交わりつつ並べられ読者の心にしっかりと縫いつけられていく。

 こどもはいつかは大人にならねばならない。そのとき、懐かしくも振り返られる余韻を読者と主人公が共有できるのは幸いであろう。

 必読本作。

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