概要
夏が来るたびに花の芳香があふれる洋館の過去の一コマ
キジバト荘という宿泊施設の洋館にまつわる匂蕃茉莉の花と、その芳香にまつわる物語を、三代目として継ぐ予定の青年、幾都が語る。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!毒と花びら
法で禁じられた行為には、いつの時代にもスリルと浪漫、そして美学があるものでございます。たとえそれが戦後の日本という極めて特殊な時代であろうとも。
短いながらもこの作品には戦火を潜り抜けた重たい真実と、焼け野原に芽生えた新しい命の輝きという相反するものが両立していました。
戦争は建物のみならず、豊かな文化や人の心をも焼き尽くします。けれどそれで全てが終わりではありません。文化の長所は必ずや継承され、先の歴史に語り継がれていくものなのです。ただし、ひとつご注意を。殺伐とした社会でこそ人はリスクと浪漫にどこまでも惹かれてしまうものですが、耽美な毒に酔いしれれば待っているのは破滅のみ。耽美は毒を含…続きを読む