毒と花びら
- ★★★ Excellent!!!
法で禁じられた行為には、いつの時代にもスリルと浪漫、そして美学があるものでございます。たとえそれが戦後の日本という極めて特殊な時代であろうとも。
短いながらもこの作品には戦火を潜り抜けた重たい真実と、焼け野原に芽生えた新しい命の輝きという相反するものが両立していました。
戦争は建物のみならず、豊かな文化や人の心をも焼き尽くします。けれどそれで全てが終わりではありません。文化の長所は必ずや継承され、先の歴史に語り継がれていくものなのです。ただし、ひとつご注意を。殺伐とした社会でこそ人はリスクと浪漫にどこまでも惹かれてしまうものですが、耽美な毒に酔いしれれば待っているのは破滅のみ。耽美は毒を含んでいる物なのです。
現代にも通じる教訓と美しさを含んだ昭和の浪漫小説。
大正明治昭和の浪漫が好きな方は是非!