歴史ある京都だからこそ、笑い飛ばせない重みがある

読んでいて文章の美麗さと格調の高さに驚かされました。
丁寧に段取りよく京都の魅力と歴史を伝える前置き、『戻り橋』など知っている地名がポンポン出て来て読んでいるだけワクワクする導入部、そして情景が目に浮かび郷愁がにじみ出るかのような祖母の家の丹念な描写。どこをとってもまったく隙がありません。非常にレベルの高いエッセイだと感じました。

神隠しの話は日本全国の各地にあるものですが、歴史ある京都で、生き証人であるおばあちゃんの口から語られてこそ伝わる重みがあるというものです。語られた三つのエピソードは京都の歴史の光と闇を象徴するかのようで、味わい深く……生命と人生に対する考え方が歳と共に変化することをサラリと表現したオチは考えさせられるものでした。

夏休みが終わり、祖父祖母の実家から戻ってきた今だからこそ読んで欲しい、「現在」の大切さを伝える大事な話。説教臭さなしで伝えられる腕はお見事です。
エッセイ好きであれば是非!