冷えた関係と自己認識の狭間で揺れる心情が、静かで鋭い筆致で描かれる。理屈では分かっているのに変われない自己への諦念と、それでも何かを変えようとする微かな意思が胸に刺さる。月の比喩が印象的な余韻を残す秀作です!
孤独な人はみな詩人である。なぜならば、他者と距離を置きたくなった人間はそれだけ自然を愛するようになるからだ。自然は万人に優しく微笑みかけてくれる。決して誰かを差別したり依怙贔屓をしたりはしない。その平等さが、孤独な人を引き付けるのだろう。この作品には、そんな孤独な詩人の心境がよく描かれています。なぜ人は人に絶望するのか、その理由が深い所まで突っ込んで書かれている。それでいてまったく希望のない終わり方というわけではないので読後感もさわやかなのが良いかと。大自然を愛する貴方に、是非読んで欲しい一作です。
部屋のなかの情事もひとりベッドにもぐりこむ私も月の明かりが届かないところでおこなわれているように見えて、カーテンからもれる明かりにほのかに照らされています。月は空にあってみんなを平等に照らすけれど見上げるひとは月を独り占めできます。そんな話ではない。
このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む(181文字)
もっと見る