明るく、楽しく、キュンとなる。少女小説の夢と理想が詰まった傑作

 『天職検査』で、自分の天職がなんなのかわかる世界。
 天涯孤独極貧少女のノアナも、17歳になって天職検査を受ける。すると、ノアナの天職は『担任教師・ユガリノス先生の妻』と出た。ユガリノス先生は、モジャ髪でダサくて嫌味な27歳。10歳も年上の、しかも嫌いな男性の妻が天職ってどういうことなの? これまでに天職検査が間違っていたことは一度もないというけれど……
 春休みの課題である職業体験で、ノアナはユガリノス先生の『妻体験』をすることに。その過程で、ノアナはユガリノス先生の本当の姿を知っていく……

 ノアナから見たユガリノス先生は、最初こそネガティブイメージの塊ですが、主人公の天職が『妻』なのに、ダメ男なわけがないですよね。そういうお約束も外さず、純粋だけどちょっと(かなり?)大雑把なノアナと、過去にいろいろありそうなユガリノス先生の凹凸が心地よく語られ、自然と二人を応援したくなります。やりとりも軽妙で、読んでいるとすごく楽しい気持ちになれます。ノアナの友人たちも愉快で可愛いです。

 『嫌味だけど本当はやさしいヒーロー』を少女小説で最も尊い存在だと思っている私としては、ユガリノス先生がたまらなく好きです。

 2023/12/29時点では、この先に波乱の予感があるので、じっと二人を見守りたいと思います。

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