概要
伯父は、狷介にして善く罵り、人をゆるすことを知らない人物であった。
三造の伯父は、狷介にして善く罵り、人をゆるすことを知らない人物であった。伯父の死後、彼の著書を図書館に寄贈するよう親族より託された三造は、躊躇しつつ、その生き様を思い返すのであった。角川文庫『文字禍・牛人』所収。(※キャッチコピーは本文抜粋)
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!中島敦の処女作
社会人となり、さて世に問おうと認められたという謂において処女作となる作品。
この後に『虎狩』があるが、それと同じく、私小説、に分類されるものになっている。
実際に、中島敦の伯父である中島端が主要人物となっていて、タイトルの『斗南先生』は端をさしている。端が斗南狂夫と自虐、自嘲した号による。
社会人になって初の作品、まだまだ若い時分の作だが、(といって、亡くなったのは三十三。晩年も若いものだけれど)すでに老成した気韻がある。本作はほとんど評価されなかったらしいが、当時の陰湿な狭い私小説が持て囃されるなかにおいては、あまりに規格外であって、持て余されたといったところではなかろうか。
骨格といい、…続きを読む - ★ Good!一言では纏まらない伯父さんへの想い
前半の感想は「ヒェ~ッ!伯父さんやりたい放題じゃないか。親戚一同かわいそう…いやー大変だな~」と思いながら、「その伯父さんからどんなムチャブリされたの?ホレホレ」と先が気になって読めます(笑)
後半ではその伯父さんが残した遺稿を東大に寄贈するかしないか、その書籍の中身を読まずに十年近く経ってから初めて内容を読んで、「伯父さん、めちゃくちゃ考えてたんやな~」と主人公がなんとも言えない感情が湧くのでした。
生きてる時には苦い経験や嫌な思いばかり強調されて、死後十年経って初めて一人の人間として再評価できるようになるってことは、相当癖が強くて言動がキツかったんだな~と思いました。