六
伯父の遺稿集の巻末につけた、お
だが、結局彼は、それを図書館に納めることにした。生前、伯父に対して殆ど愛情を抱かなかった罪ほろぼしという気持も、少しは手伝ったのである。実際、近頃になっても彼が伯父に就いて思出すことといえば、大抵、伯父にとって意地の悪い事柄ばかりであった。死ぬ一月ばかり前に、伯父が遺言のようなものを
彼は、軽い罪ほろぼしの気持で「斗南存稾」を大学と高等学校の図書館に納めることにした。但し、神経の浪費を防ぐ為に、郵便小包で送ろうと考えたのである。図書館に納めることが功徳になるか、どうか
× × ×
右の一文は、昭和七年の頃、別に創作のつもりではなく、一つの私記として書かれたものである。十年
伯父の死後七年にして、支那事変が起った時、三造は始めて伯父の著書「支那分割の運命」を
支那事変に先立つこと二十一年、我が国の人口五千万、歳費七億の時代の著作であることを思い、其の論旨の
大東亜戦争が始まり、ハワイ海戦や
あが屍野にな埋みそ黒潮の
さかまたはををしきものか熊野浦寄りくるいさな討ちてしやまむ
斗南先生 中島敦/カクヨム近代文学館 @Kotenbu_official
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