本作は総題『古潭』のなかの一篇。
ちなみに『古潭』は四篇あり、「狐憑」「木乃伊」「山月記」「文字禍」。
ヘロドトスの『歴史』から材をとった作品。
詩人、もしくは語り部の走りであるひとの、本人もまわりも当然それであると分からず、憑きものだとする。
ただおもうのは、憑きものであることは変わりないのかもしれぬ、ということ。
書き手というものは。
また、それだけの打ちこみ方ができぬようでは、と思われもする。
私事だが、1話仕上げるのに、最低7、8時間。10時間12時間はざらにかかる。仕事をしながら、合間合間を縫って、は憑きものでなければそんなことはできかねようし。
なにかそういう、書き手を励ますというのか、慰めるというのか、そんな効用を感じる一篇。