読書好きの青年ナイツ。彼の仕事は殺し屋。いっけん大人しそうな彼は、ある事件により殺し屋にならざるを得なかった心優しき殺人マシーンである。
ある夜、彼は暴漢に絡まれていた少女サンを助ける。その日より、天真爛漫なサンに付きまとわれることになるナイツ。
最初は迷惑がっていたナイツだが、やがて彼にとって彼女はなくてはならない存在になり……。
物語の舞台は現代ではあるが、架空の都市、架空の世界。その世界には<叡智>と呼ばれる異能をもっ人間が存在する。<夜の沈黙>という叡智をもつナイツは、その力を駆使して、静かに、そして確実に標的を仕留めて行く。
つらい過去から殺し屋になった心優しき青年と、天真爛漫ではあるがその裏に秘密をもつ少女の邂逅とふれあい。そこに<叡智>を駆使した殺し屋同士のバトルがフル装填されています。
悩み、傷つきながらも殺しを続けるナイツは、本当に大切なものを見つけることが出来るのか? そして、やっと手に入れたもっとも大切なものを守り切ることが出来るのか?
優しい心をもつ殺人者の、夜と昼の物語。その結末は、どうぞ読んでお確かめください。
あらすじは割愛する。
この作品は、殺し屋ナイツと彼と関わる女子大生サン、そして一風変わった殺人動機をもつ依頼者たちの物語でまとめられている。
小説で描かれる殺し屋、と一口に言ってもその種類が多様であることはご存知であろう。
暴虐な殺人快楽者がそうなることがあれば、それ以外に生きる道がなかった哀れな青年ともあろうか。
この主人公であるナイツは、どちらかといえば後者にあたる存在だ。
だが、読者が惹かれるのは「哀れな殺し屋」ではない。
このナイツ、彼の殺し屋としての腕前は確かであるが、それ以上に読者が心惹かれるのは彼の細やかな心情と葛藤、そして誰よりも人間味あふれるその性格にあると思う。
「生と死」について「死」を仕掛ける側でありながら「生」に対して誰よりも情があふれる彼だからこそ、読者は心惹かれ、感動し、引き込まれてゆく。
没入感も、全体の話の構成も、どこをとっても魅力の欠くことのない作品です。
ぜひ、ご一読を。
追記。
ただいま、すべて読んできました。
ひとこと紹介文では「誰かのために、生きていけるだろうか」としましたが、必ずこの話の最後ですべてが腑に落ち、二人を愛おしく思っているに違いないと思います。
生きていること。
誰か、とともに。
他者を殺し、己の生命を護っているナイツであるから、たどりつけるその答えに、ぜひ注目してほしいと思います。
殺し屋のナイツと女子大生のサン。
対極の存在である2人が少しずつかけがえのない存在になっていく展開は目が離せません。
2人の間には常に落ち着いた静寂の空気が流れています。
一緒に本を読んだり、食事をしたり。何気ない日常を2人で過ごすだけなのですが、それが読んでいてとても心地よかったです。
殺しという「非日常」が当たり前になっている世界設定のせいで2人の「日常」がより、輝かしく見えたのだと思います。
恋模様は穏やかですが、ストーリーやアクションシーンは大きな動きを感じることができます。
〈叡智〉と呼ばれる異能を駆使して繰り広げられるバトルは必見です!
もっと色んな〈叡智〉が見てみたいなと思いました。
思わぬ人間関係の繋がり、展開があるので最後まで楽しんで読むことができます。
敵味方の関係性が変わっていくのも読んでいて面白かったです。
異能を持つ殺し屋ナイツが女子大生のサンと出会い、成長していく物語です。
主人公のナイツは凄惨な過去を持ち、やむを得ず殺し屋になった背景がある為、本当は殺人をしたくありません。けれども彼には殺し屋を続けなければならない事情があります。
毎回暗殺をする度に彼は酒に溺れ、遺されたターゲットの家族のことを思って涙します。殺し屋の世界は孤独で、いつ自分も暗殺されるかわからない世界。世界観と主人公のバックグラウンドがよく練られている為、読者はナイツに感情移入し、応援したくなります。
そんな殺しの日々を送ってきた彼の前に、ある日女子大生のサンが現れます。いささか強引すぎるくらいに彼の元へ転がり込み、グイグイ距離を近づけてくるサン。最初は胡散臭がっていたナイツも、彼女との関わりを通して次第に彼女の存在が大きなものになっていきます。
だけど殺し屋の世界はいつだって残酷なもの。次第にサンの秘密や彼女の背景が明らかになってきて、物語は大きく動き出します。
ナイツの心情の動きを描き出す構成によく練られたストーリー、常に生死と隣り合わせの緊迫した攻防戦とカタルシスを得られる熱い展開。
10万字ちょっとという短い物語なのに内容は濃密で読了後の満足感がとても高いです。
優しく孤独な殺し屋の物語。一読の価値ありです!