圧倒されるような悲しみに見舞われたとき、人の心は麻痺するのだと聞きます。
悲しみから立ち直り、前へ進むのは、簡単なことではないでしょう。
本作の主人公、氷藤貴之の職業はフリーライター。副業として彼が営む「代筆屋」は、心の寄り添い思いを汲み取るというのが売りの、お手紙代行サービスです。
インタビューに慣れていること、文章力があること、そして字が綺麗なこと。それを生かそうと始めた副業でしたが、突然に掛かってきたクレームの電話により、貴之は家に押しかけてきた看護師の女性を迎え入れることになってしまいます。
そんな、双方わりと初対面は最悪な、出会いを果たし。
しかし貴之は彼女、美優と一緒に依頼者の想いを聴き取ってゆくうちに、自分が忘れかけていた願いを思い出してゆくのでした。
各章で描かれる「依頼人と代行屋のやり取り」と、章を追うごとに深まる「貴之と美優の関係」が、この物語の見どころです。
「死に向き合う」という骨子が様々な形で描かれてゆきますが、重すぎず、軽すぎず。すっと入り込める共感性とともに、彼らの心と思いが変化してゆく様を見守ることができます。ぜひ、ご一読ください。
上手く言葉にできない想いを汲み、代わりに手紙を書く。それが『代筆屋』のお仕事。
フリーライターの氷富貴之は、仕事の不安定さから副業として代筆屋も行なっているが、あくまで副業と割り切った働き方をしていた。
そんなある日、貴之が書いた手紙についてクレームがあると現れた女性、新田美優。
彼女は言う。
──「あなたにはがっかりしました」
依頼人のそれぞれのエピソードの中で、本当に伝えたい想いを汲み取ろうとするふたり。その中で過去の傷に向き合っていく姿に感動を覚えます。ふたりの焦れったい恋模様も見どころ。
場面がありありと浮かぶ描写はまるでドラマを観ているかのようでした。
ほっこり心が温まる物語です。
まず、代筆屋という題名に惹かれて読み始めたのですが、主人公とヒロインのキャラがとても生き生きしていてあっという間にこの作品に魅了されていました。
“死”をテーマにしている作品だと感じましたが、私は今までそういう作品を読むのが正直苦手でした。
しかし、この作品は、誠実に“死”と向き合っていると感じました。やたらと涙を誘うシーンが誇張されているわけでもなく、至って淡々と流れるような文章で綴られる物語ですが、登場人物達の心情が動作や言葉の端々からリアルに感じられて、自然と涙が込み上げてきました。
代筆依頼の内容も、意外性のあるものが多く、依頼主やその周りの人間関係を繊細に表現していて、純粋に面白かったです。
主人公とヒロインの恋愛が始まりそうで始まってんのか!?どっちだ!?みたいな絶妙な関係も大好きです!
素晴らしい作品でした!!ぜひ、多くの方に読んでいただきたいです。
代筆屋です。マイナーな職業ですが、日々の暮らしの中でちらっと看板が視界に入ったりするため、存在はよく知られていると思います。
代筆は時代によってポジショニングが異なるわけですが、この作品においては依頼人の代わりにステキな手紙を書くことですね。
となれば依頼人との信頼関係を構築しないと、適切な内容を書けないわけですから、ただ直筆の文字が綺麗なだけでは務まらないわけです。
この依頼人と執筆者の関係性を繋ぐ形で、代筆屋の主人公はヒロインと出会うことになります。
主人公は過去大きな事故に巻き込まれたせいで、やや心の動きが鈍っています。しかも日々の暮らしに追われているせいで、完璧な仕事が出来ているわけではありませんでした。
そんな隙間を埋めるように、ヒロインがまるで押しかけ女房のように突撃してきたわけです。
このあたりの細かい事情はネタバレになるで、いまのところはふわっと触れておきます。
とにかく主人公とヒロインは協力関係になって、代筆屋の仕事を回していくことになります。
そうやって物語を読み進めていくうちに、図太い精神の持ち主と思われていたヒロインに、実は心の弱みがあることがわかってきます。
その弱みとは、主人公も他人事ではなく、なぜ彼が代筆屋を始めたのかという根本的な理由にも重なってくるのです。
この弱みに関連して、みなさんに覚えておいてほしいことがあります。作品の序盤で、ヒロインが職場の服の上にコートを着て出歩くシーンがあるんですが、ここを覚えておいてください。
なぜ私がレビューのタイトルに【再生の物語】といれたのかわかるはずですから。
フリーライターの氷藤貴之は副業として代筆屋を始めます。
そこへ現れたのが高校生に見える童顔の看護師、新田美優でした。
彼女は貴之の書いた手紙に対し、クレームで訪れたようですが……。
明るく他人思いながらも少々強引な美優に、仕事に対していい加減だった貴之との組み合わせを描いた物語です。
美優との出会いは貴之にどのような変化を与えるのか。
手紙を通した人間模様が、読みやすく優しい文章で綴られています。
「感動」というワードだけでは足りないので、ぜひ代筆屋にレビューを書いてもらって、この小説の魅力を多くの人に伝えてもらいたい、そう思える小説です。
そんな、不器用な代筆屋さんのお話です(どんなだ)
『代筆屋』、素晴らしいお仕事です。気持ちを伝えるのが下手な人に代わり、書いてくださるんですから。
でも、この代筆屋の貴之さん、相手の心に寄り添えるような文章が得意ではありませんでした。そこで出会ったのが、看護師の美優さん。看護師さんだから、相手の心に優しくそっと寄り添い、気持ちを聞いてあげます。それにより、貴之さんにも変化が。
文章を書く身としても、読む身としても、考えさせられ、ジーンとくるお話です。
正反対のようで、お似合いな二人が書く手紙は、あったかくて胸に沁みます。ティッシュをご用意してお読みください!
大切な人に、伝えたい言葉はありますか。
感謝の気持ちを言いたいけど、うまく言葉にできない。そんな人に代わって気持ちを手紙にしてくれるのが、代筆屋です。
主人公の貴之はそんな代筆屋として、依頼人に代わって手紙を書いていたのですが……。
ある日彼の元に来たのは、美優さんという女性。代筆を依頼にきたのではありません。貴之が代筆した手紙に不満があると、クレームを言いに来たのです。
代筆屋ならもっとちゃんと依頼人の気持ちを相手に伝えるべきだと言う美優。
その日から美優は、貴之をサポートするようになっちゃいます。貴之はそんなの頼んでないのに、押し掛け助手になりました。
行動力のある子ですね。明るく可愛いキャラクターで、貴之を振り回してくれます。
そして美優がそんなことをするのは、手紙には人の心を動かす力があると知っているから。
大事な人に、大切な想いを伝えるお手伝いをする代筆屋。
読んでいて暖かい気持ちにさせられるお話です。
フリーライター貴之の副業は、依頼人の思いを汲み取り、気持ちを手紙にしたためる「代筆屋」。本業で培った、インタビューする力と文章力を活かして始めてみた仕事でした。
ところがある時、突然美優という女性が現れクレームが。
なんでも、以前代筆した手紙が依頼人の心に寄り添えておらず、そのせいで受け取った人が気落ちしてしまったとのことでした。
たとえ文章を書くのが苦手でも、わざわざお金を払ってまで他の人に手紙を書いてもらうなんて、なかなかしないもの。にも関わらず依頼してくるということは、それだけこの手紙で伝えたい、大切な思いがあるからでしょう。
はたして貴之は、そんな大切な思いを汲み取れる代筆屋となれるのか。
そんな代筆屋のお仕事事情と同じくらい魅力的なポイントが、貴之と美優それぞれのキャラクター。
代筆屋の仕事を通じて少しづつそれぞれの抱えているものやバックボーンが明かされているのですが、新しい事実が明らかになっていく度、それまで持っていたキャラの印象が変わったり、逆にここまでの行動にストンと納得がいったり、どんどん二人の魅力が深まっていきます。
代筆屋に、二人の関係。それぞれの面白さが詰まった、心温まる物語です。
大切な人にこそ伝えたい想いがある。
けれど本当に伝えたい想いこそ伝えづらい。
そういった依頼人の気持ちを汲み取り手紙を代筆する貴之と、言いがかりのようなクレームで仕事場に乗り込んできた美優の二人を中心とした、時に感動、時にラブコメっとした物語。
心の痛みを知っているからこそ、人の想いを深く理解できる。
寄り添い、優しくすることができる。
貴之と美優の出会いはきっと偶然を装った必然で、二人を繋いだのは「手紙」だった。
グイグイくるようで実は臆病なところがある美優と、口では軽くあしらいながらも少しずつ心を持っていかれる貴之の関係が微笑ましい。
二人の恋愛模様、そして手紙で想いを伝える感動が描かれています。
手紙っていいですよね。
きっと誰しも誰かに伝えたい想いを抱えているものだと思います。
この作品を読んで、少し恥ずかしいけれど手紙を書いてみたくなりました。
(第一章読了時の感想です)なあなあで仕事をしていた主人公が、明るく奔放なヒロインと共に、「代筆屋」の依頼をやり直すお話です。
登場人物達が皆リアルで文章も巧妙なので、ドラマを観ているような臨場感があります。
代筆の作業を通しながら紐解かれる想いに、大変心が温まります。特に「代筆」された心のこもった文章は、必見です。
「言葉に出来ない思い、手紙にして届けます」という言葉の通り、温かく血の通った仕事であるべき「代筆屋」。
今後この二人がどのように心を通わせていくのか、どんな過去があるのか……続きも楽しみに読ませていただきます。
貴之さんは、自分では難しいので代わりに手紙を書いて欲しいと言う依頼主から、今風にホームページで仕事をやりとりして、代筆をすると言う代筆屋を稼業としています。
この代筆と言うのがとても面白い設定と肩書きだと思いました。
最初に貴之さんが黒歴史にして忘れていた案件を思い起こさせられます。
病院勤めをする美優さんが、看護師として、とある患者さんを悲しませる内容や表現の手紙だったと、便箋を突き付けます。
貴之さんの多忙を理由に、これでいいと投げやり且つ丸め込んで依頼主の方に握らせた便箋だったのです。
貴之さんと美優さんにハラハラさせられます。
人間関係や恋の行方にドキドキしますね。
読み易い筆致です。
是非、ご一読ください。