代筆屋を通じた再生の物語

 代筆屋です。マイナーな職業ですが、日々の暮らしの中でちらっと看板が視界に入ったりするため、存在はよく知られていると思います。

 代筆は時代によってポジショニングが異なるわけですが、この作品においては依頼人の代わりにステキな手紙を書くことですね。

 となれば依頼人との信頼関係を構築しないと、適切な内容を書けないわけですから、ただ直筆の文字が綺麗なだけでは務まらないわけです。

 この依頼人と執筆者の関係性を繋ぐ形で、代筆屋の主人公はヒロインと出会うことになります。

 主人公は過去大きな事故に巻き込まれたせいで、やや心の動きが鈍っています。しかも日々の暮らしに追われているせいで、完璧な仕事が出来ているわけではありませんでした。

 そんな隙間を埋めるように、ヒロインがまるで押しかけ女房のように突撃してきたわけです。

 このあたりの細かい事情はネタバレになるで、いまのところはふわっと触れておきます。

 とにかく主人公とヒロインは協力関係になって、代筆屋の仕事を回していくことになります。

 そうやって物語を読み進めていくうちに、図太い精神の持ち主と思われていたヒロインに、実は心の弱みがあることがわかってきます。

 その弱みとは、主人公も他人事ではなく、なぜ彼が代筆屋を始めたのかという根本的な理由にも重なってくるのです。

 この弱みに関連して、みなさんに覚えておいてほしいことがあります。作品の序盤で、ヒロインが職場の服の上にコートを着て出歩くシーンがあるんですが、ここを覚えておいてください。

 なぜ私がレビューのタイトルに【再生の物語】といれたのかわかるはずですから。

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