突如、世界中にダンジョンが出現し始めた。ダンジョン攻略配信を収益化すれば莫大な富を得られるかもしれない……というダンジョン・ドリームが現実のものとなった日本、関東地方。
病気の妹を抱える高校生、木南カンナは、亡き母と蒸発した父に代わって妹の治療費を稼ぐため今日も『Dライバー』としてダンジョンの配信に勤しむ。
カンナのスキル『ダンジョンクリエイト』は、その名の通り、ダンジョンの構造を変えてしまうというものだ。カンナは、自分の能力のゆえに『ダンジョンマスター』――この世界にダンジョンを生み出した存在である、と誤解されることを恐れ、スキルを隠しながらひとりで戦っている。そんな調子だから、チャンネル登録者数が五人しかいない。収益化など夢のまた夢。
そんなカンナであったが、等々力渓谷ダンジョンで運命の出会いを果たす。
ガトリングガンで戦うレオタードの美少女、御刀アナスタシア。
彼女の危機を救ったら、アナスタシアとコンビを組むことになってしまって――
というところから始まる、カンナの自立と成長の物語です。
何よりまず、文章が読みやすかったです。
導入、設定に無理がなく、特に『ダンジョン禍』と言われる状況において社会がどうなっているか、行政は何をしているか、といったところまで考えられていたのが素晴らしいです。
しっかり伏線が機能して、各キャラクターの行動に理由があったことがわかるようになっています。特にTAKUのスキルが開示されたときは、なるほど! と声が出ました。
欲を言えば、各ダンジョンでの探索やキャラクター同士のやりとりをもっとじっくり見たかったです。そう思ってしまうくらい、魅力的な作品です!
現代ファンタジーにおけるダンジョン配信モノですね。ですから異世界が舞台ではなくて、我々が暮らしている現代日本で物語が展開していきます。
主人公は家庭の事情からお金を求めてダンジョン配信者になりました。
妹さんが重い病気で、しかもお父さんが失踪してしまったので、生活費と治療費を稼ぐためですね。
背負ったものが重いのと比例するように、現代日本に現れたダンジョンも過酷な環境となっていまして、物語が加速するほどに強い敵が出てくるようになります。
主人公はダンジョンクリエイトという特殊な固有スキルを持っているものの、活躍できる上限があるため、強敵を前にすると、どうしても苦戦することになりました。
しかし彼には心強い味方もいまして、それがヒロインです。彼女もダンジョン配信者でして、強くて美しい頼りがいのある仲間です。
さらには物語を進めていくごとに、ちょっとずつですが味方が増えていきます。
しかし現代日本に登場したダンジョンは【とある人物】の悪影響により、過酷さを増していくので、仲間たちも次々と傷つき倒れていきます。
だんだんと主人公がダンジョンに立ち向かう目的が、妹や生活費などの身近なものを飛び越えて、さらに大きなものへと変化していきます。
それはおおむね【とある人物】が原因といっていいんでしょう。
この【とある人物】が何者なのか?
その人物と主人公による対立が、ダンジョンクリエイトという特殊能力にどんな結末を与えるのか?
この物語における重要なポイントです。