待っているのか、立ち止まっているのか
- ★★★ Excellent!!!
彼女はそこにいる。
ただ、彼女自身、自分が「待っている」のか、「立ち止まっている」のかが分からない。それは誰だって、いつだって、自分自身ではよく分からないものだ。
そう、多くの人がなにかに手を伸ばす、その行為が、「求めている」ゆえなのか、「求めるふりをしている」ゆえなのかが分からなくなっているのと同じように。
この物語は、そんな彼女の揺らぎから始まる。
かつては意思をもって待っていたのだろうと思う。
けれども待つことはとても魂を削る営みだ。
待つことは、日々、希望を持ちながら諦め続けることだからだ。
そんな行為を人は長く続けることができない。
待たなくていい。自身もまた、立ち止まっていた足で歩み、求め、そして帰ってくれば、いつかだれかと、愛や愛情を持って向き合える日も来るだろう。
そのときの彼女はきっと、自分自身のうつくしい羽根を身に帯びているに違いない。