幽霊は脚がないから怖いんだ

田舎の暇を持て余した若者の緩慢な夜から始まった物語は、鍋のぬるま湯に浸かっている間にいつの間にか火をつけられていたように、逃げ場のないホラーに転調していきます。

朧げな輪郭で語られる怪異はどれも繋がりがあるようでないようで、解決されず釈然とせず不穏なわだかまりが残る。恐怖より更に恐ろしい不安が漠然と残される、怪談の本懐をしっかりと描いた高品質なホラーです。

幽霊話で無視されがちな「死んだくらいで人間がそんなすごいことできるようになるのか?」という疑問も最初に提示され、ホラーの逃げを作らない真摯な作品作り。
きっと解明されないとわかっていても、藁にもすがるように読み進めてしまういい作品です。

目々さん名物の胡乱な先輩と怖い兄もあって善し!

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