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作者 目々

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★★★ Excellent!!!

 ある建築物で発生した怪奇現象を発端として怪談収集者になった者が怪談を収集する話です。

 この話では様々な怪奇現象や怪異についての話が語られます。

 基本的にそれは体験談や噂話であり、それを聞いたものがまたそれを語り直しているわけであり、語り直されることで元の形とは違った話になります。
 それは語り手の不出来や怠惰ではなく、構造として当然のことです。

 ある事物、事象を忘却から掬い上げるためには幾らかの変異を許容する必要があります。
 誰かにそれを覚えてもらうことと引き換えに異常で異様に変容することを許容するしかありません。

 全ての話を読み切り、ホワイトマンションの真実を知ったのならば私の言っていることが分かるかと思います。

 忘れたら思い出してください。

★★★ Excellent!!!

心霊スポットに行った先輩が、帰ってこなかった。
大学生・稲谷は、納得するために、怪談を蒐集し始める。

はっきりと、怪異ではないかもしれない。でも気味が悪い。
集まってくるのは、そんな、もやもやとした話たち。
再話、という行為が怖いかもしれないと思ったのは初めてです。

★★★ Excellent!!!

田舎の暇を持て余した若者の緩慢な夜から始まった物語は、鍋のぬるま湯に浸かっている間にいつの間にか火をつけられていたように、逃げ場のないホラーに転調していきます。

朧げな輪郭で語られる怪異はどれも繋がりがあるようでないようで、解決されず釈然とせず不穏なわだかまりが残る。恐怖より更に恐ろしい不安が漠然と残される、怪談の本懐をしっかりと描いた高品質なホラーです。

幽霊話で無視されがちな「死んだくらいで人間がそんなすごいことできるようになるのか?」という疑問も最初に提示され、ホラーの逃げを作らない真摯な作品作り。
きっと解明されないとわかっていても、藁にもすがるように読み進めてしまういい作品です。

目々さん名物の胡乱な先輩と怖い兄もあって善し!