旧石器時代――たったこれだけの物語の中に、私たちの文明の根幹となった、いろいろなことが詰め込まれています。作者さまは、おそらく専門の知識を持った方だと思いますが、これみよがしにひけらかさず、そのため実に素朴で、味わいのある作品に仕上がっています。お見事です。ほほぅ、石器を見ることができる者が描いておるな……と、にやりとしました。
2万年前の旧石器時代が舞台だと言われて、自分とのつながりをすぐに感じられる人は正直、少ないと思う。ところが、ところが。この作品には、いまの私たちと同じように「成長する自分」を信じる、ひとりの少年が描かれている。熱視線をむける先は違っていても、彼が抱く「いつかは自分も」という気持ちに、共感を覚える読者は少なくないだろう。私たちは色も形もそれぞれに、夢や希望を抱いて生きている。もちろん、未来を保証してくれるような人は誰にもいないのだけれど、それでも歩いていってみようと思える、そんな一編でした。
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