概要
帝国軍には存在しないとされる暗殺組織、ガンマがある。赤茶の髪と琥珀の瞳を持つ美しい少女は、ガンマの保有する最凶兵器、暗殺人形。彼女を人は《死天使》と呼ぶ。
兵器として育てられた彼女はこころを持たなかった。
──けれど。
共和国の暗殺者《死神》。銀の髪と藍の瞳をした青年を命令通り殺すため、……殺し合うために出会ったはずだったのに。
《死神》の青年は《死天使》の少女に問うたのだ。
戦争のない世界を見たくはないか、と。
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!行く先が夜の只中だからこそ、戦禍の最中で命は煌めく
長らく続く戦争の中で、凄惨な戦場や散らされる命を目の当たりにしながら、張り巡らされる陰謀に翻弄されながら、己の行く道に迷い疑問を抱きながら、もがき生きる人々の姿を美しく描き出している作品。
帝国側の兵器にして、《死天使》の呼び名を持つ暗殺人形の少女・ナタリアは、命じられるままに標的を始末し暗躍していた。彼女はある時、共和国側にいる暗殺者、《死神》の呼び名を持つ青年・ライを始末すべく差し向けられ、実際に戦場でも会敵するが――。
心が分からないナタリア、かつては自分もその闇にいたライを始め、様々な人の思いや夢が交錯し、けれど多くは破れ壊れていく。大切な何かを失い、自分自身も削られ壊れて…続きを読む - ★★★ Excellent!!!こころを知って欲しい。でも、知らないで欲しい。残酷な夢をみるくらいなら
――暗殺人形。
それは、こころという大事なものがない、究極の欠落の美だ。我々は、このあまりにも足りない美しい存在に、心を奪われることになる。
本作は、ローデンハイム帝国とグラトニア共和国の終わりの見えない戦争の中で、多種多様な暗殺者や兵士たちが暗躍する模様を書いたダークなミリタリーストーリーだ。出てくる面々は、本当に個性的で見ていて飽きない。巧みに練りあげられたキャラクターたちは、脈拍の音が聴こえてきそうなほど活き活きとしすぎていて、読者や作者さえも振り回すほどに強烈な個を持っている。
中でも一際異彩を放つのが、冒頭でも触れた暗殺人形だ。
人なのに、人の心を持たないように…続きを読む - ★★★ Excellent!!!流麗なアクションと丁寧な心理描写で綴られる、無機質な天使の軌跡
主人公ナタリアは感情を知らない。知っているのは殺す事だけ。
暗殺機関”ガンマ”に所属する、心も体も削ぎ落しきった無機質な少女に下された命令は、元”ガンマ”所属の脱走兵の殺害。
一筋縄ではいかない暗殺試行の中で、徐々に感情が目覚めていくナタリア。
時には流麗な格闘戦で、時には丁寧な心理描写で描かれる契機。
しかし、不穏な世界がナタリアの健やかな成長を許しはしない。
不穏さに拍車をかけるのがガンマの長”アリア”。
果たしてこれからどうなるか、まだまだ底が知れない。
そんな期待感と共に読み進めたくなる作品です。
※ep.29拝読時点でのレビューです