第3集 データ

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春のおふくろの味祭り、が老舗味噌メーカーの企画で開催された。新社会人を応援したいと始めたらしい。スマホで撮影した各家庭の味噌汁の作り方をクラウドにアップする。朝に夕にボタンを押せば、機械が懐かしい味にメーカーの味噌汁をカスタマイズする。開始から一週間、各方面で企画が炎上し、祭りは終わった。だが、クラウドには今も大量のおふくろの味が保存されている。


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社内のセクション毎にAIが導入された。上半身だけの人形が休憩場所にも設置された。人間の社員の表情も良くなったと好評価だ。AIが皆の愚痴を聴いているらしい。「貴方は頑張っていますよ」機械は最適な労いを話し相手に平等に与える。集められたデータが人事評価に影響していると、知る人はいない。


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フォログラムレストランと言うのが流行っている。店内を立体フォログラムで世界各国の絶景を写す。

風光明媚な景色と共にランチが食べられるので、人気を博しているらしい。近くの店に行くと随分賑わっていた。しかし、視覚にインターフェースを入れていない近所のお婆さんが言うには「いつも空いているね」。客をフォログラムで水増していたとは。


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『郷愁ドレッシングは懐かしい家庭の味が手軽に味わえます。我が社のクラウドに保存された各家庭の味噌汁レシピを元に最新AIが懐かしい味を抽出しました』味噌の販売コーナーの一角でロボットがドレッシングの試食を勧めて来た。レタスと一緒に食べる。「味がしないぞ」私が言うと『心の問題ですから』しれっと機械に心と言われるとは。。

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