第10話 腐女子の天国とマジメな話 (海外編)


 スペインの北西海岸部を旅して来た。サン セバスチャン、ビルバオ、サンタンデールと要所を巡った。


 旅行中は雨が降る日もあって、それはそれは寒かった。最高気温が四度の日もあった。しかし、私はかつて悪の組織に捉えられて(嘘)、暗くて寒い土地に長い間閉じ込められていたので肉体が寒冷地仕様に改造されている(これは本当)。したがって、十二月に午後五時を過ぎても空が明るい土地の四度は、寒くても痛くはなかった。観光は楽しかった。


 そんなことはさておいて。

 街歩きをしていて気が付いたことがある。それは、「ゲイのカップル、めっちゃ多くね?」という点だ。

 スペインはあちこち訪ねているが、あまりゲイの人を見ない。イギリスではオネエ言葉のお兄さんや、いかつい感じのお姉さんをときどき見かけるが、スペインでは強いて言うならバルセロナのような都市部でちらっと見かけた程度だ。アンダルシア地方に至っては、昔気質の土地柄やムスリム人口の多さなども手伝って、外国人(非スペイン人)以外のゲイの人を見たことはない。


 しかし、サン セバスチャンでゲイのカップルを見かけて「珍しいな」と思った。フランスが近いから、その影響なのかと思った。ビルバオでは、ホテルの受付のお兄さんが珍しくオネエ言葉だった。スペインでオネエ言葉に出会ったのは初めてじゃないだろうか。そして、サンタンデールに着いてびっくりだ。にこやかに肩を並べて歩く同性カップルがなんと多いことか。歩道をそぞろ歩く人々の半分くらいがゲイの方々である(あくまで推測です)瞬間にも遭遇した。


 大西洋に面しているので、新しい文化を受け入れやすい気風があるのだろうか。リベラルな土地で、みんな安心して暮らせるのだろうか。他の地域では、市の入口と出口にレインボー カラーの旗と共に「LGBTQ への差別を許しません!」とポスターを掲げている自治体を見たことがある。しかし、サンタンデールでも、その周辺の都市でもそんな声高に権利を主張しているところは見なかった。にもかかわらず、同性カップルであっても、異性カップルであっても、ごく自然に混じり合って普通の生活をしている様子は感動するくらい力の抜けた光景だった。


 男性がむやみにオネエ言葉を話したり、女性が頑張っていかつい格好をして、自分の中の異性寄りの側面を強調するのは、社会が期待するそれぞれの性役割に対する反発のように受け取れる。性自認が男であっても自然に口調が優しい人はいるし、性自認が女でもきっぱりした性格の人もいたりするんだから、性別なんて大雑把に考えておけばいいのに、そうできずに来た人類の歴史はなかなか覆し難い。それを軽々と超えて生活する人々を擁するサンタンデールの文化はどんなものなのだろう。暮らしてみたら楽しそうな街だと思った。寒くて雨が多いことを除けば…… 😑


 あとは、妄想好きな腐女子の人が萌え死にしそうな街だなと思った。ただし、濃い系のオジカプ推し限定です。


(2022 年 12 月 15 日)

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