第17話 他人の匂い


 まあ、ちょっと微妙な内容なんですが……。


 私が離京している間、東京の家には(そう書くとカッコいいな! セレブみたいだ)親戚の男の子が彼女と一緒にひと月ほど滞在していた。二人は完全にリモートで働いていて、平日はインターネット越しに仕事をして、週末は箱根やら富士山やら、関東周辺を観光して回っていた。


 何ヶ月かの後、また私が東京に戻ってきたのだが、家に入るなり違和感が。一瞬なぜなのか分からなかったが、匂いだ。


 自分家なのに、他人の家に来たような匂いがする。そんな匂いを意識する自分にびっくりした。


 確かに人の家にお邪魔する時、玄関を入るとその家なりの匂いがする。しばらくすると慣れて意識は向かなくなるが、「よそのお家にいる感覚」というのはそのまま残る。もちろん、人のうちにいるという客観的な事実を認識しているということもあるが、多分、この匂いが無意識にアウェイ感を植え付けているのではないか。


 この他人の家のような匂いを自分の家にいるときに感じるというのは強烈な違和感を感じさせるというのを実感した。結局、二人が使った毛布やらタオルやらをごっそり洗ってしまった。


 私はもともとテリトリーに非常にうるさい性分だ。子供の頃は完全にインドア派で外に行くのも、人の家に行くのも嫌だった。人の家でトイレに入るのも嫌だった。それを思い起こすと、すべては自分のテリトリー外の匂いが不安にさせるせいだったのではないかと思う。同時に猫や犬が自分のテリトリーにマーキングしていくのはそういうことなのかと納得もする。


 雑誌などでは美しい住宅やインテリアなどの写真が溢れていて、私たちは大変進歩的な生活を送っているんだと錯覚するが、こういう原始的な動物の側面は脈々と生きているんだなと感じた。


 ちなみに二人は立つ鳥後を濁さずに大変キレイにしていってくれたことをここに記しておく。



(2023 年 2 月 20 日)

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