　とある喫茶店にて。

　大学生と思われる男女。

　何やら深刻な雰囲気で席に座った。

　男が言う。

「オレは今日、本当は来たくなかった。アリサ（仮名）はなんでオレに会いたいって言ったの？」

「それは……」

　以降の会話を要約するとこう。

　アリサは、ユウキ（仮名）と付き合い始めたが、ユウキにいろいろと合わせなきゃいけないのが面倒に思うようになっていた。親友のマユ（仮名）に相談したところ、「そんな彼氏別れたほうがいいよ」と言われた。

　アリサはしばらく迷っていたが、マユが強く言うので「別れたほうがいいかな」と思い始める。折しもアリサはバイト先の男子とちょっといい感じになり、それを理由にユウキに別れを告げた。

　アリサもユウキにも過去に元カレ・元カノに浮気された過去があり、ユウキは二度目の裏切りにひどく傷ついた。アリサが自分がされて傷ついたことを人にするのが信じられなかった。

　ユウキは過去一か月、アリサを忘れようと必死だった。しかし突然、アリサから連絡が入る。迷った末にアリサに会うことにした。

　アリサは言う。

「会おうって言ったのは……まだ、好きだなって思って」

　ユウキは涙声で応える。

「今までに付き合った子の中でアリサが一番好きだった。

「だから、気持ちとしては嬉しいし、また付き合いたいって思うけど。

「オレはアリサに『オレに合わせなきゃいけない』って思いながら付き合って欲しくない。

「それに、マユがまた『別れろ』って言ったらアリサはどうするの？

「あと、その別の男とはどうするの？」

　アリサはどの質問にも「……うん……」としか答えない。

　そのうちにユウキは、テーブルにおいてあった紙で手を切ってしまったらしい。

　アリサが「血が出てる」と言う。

　ユウキはすぐには分からずに、あちこち見て、やっと血の出ているところを確認した。そしてティッシュを求めてトイレに立った。

　その間、アリサはただユウキを見ているだけだった。

　ユウキ！　もうそのまんま帰れ！　君にはもっといい子がいる！

(2023 年 6 月 11 日)

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