第20話 メトロセクシャルなお兄ちゃんの電話

 電車に乗ったら、足袋ブーツを履いているお兄ちゃんがいた。


 地下足袋がブーツになったヤツ。つまりはつま先が割れたブーツ。


 珍しいブーツだなあ、と思ってお兄ちゃんを見る。


 全身黒のコーディネートで、黒の T シャツに黒のポリエステルのパンタロン、ウエストには黒地に白抜きロゴのルイ ヴィトンの合皮ベルト。ベルト通しにはミニ スカーフが結ってあった。手元にはラドリーの黒いレザー バッグ。犬のチャームにネーム タグも付いていた。やたらでかい青いフェイスの腕時計もしていたが、時計には疎いのでメーカーはわからなかった。ヘア スタイルは和田アキ子風だった。


 イヤフォンを着け、緑色のケースを被せたケータイで通話中。


「いや、電話番号は変えられないんですよ。


「トークンは電話番号と紐付けられているんで、そのトークンにはその電話機しか使えないんです。電話番号を変えると(SIM を変えると?)、そのトークンも変なことになっちゃうんで……。✕✕さんは携帯 25 個持ってて……。だから、画面も 25 個あって、それ見てますよ。


「うん、それでね。トークン入れて 5 日くらいするとチャッキン(着金?)があるんで。


「だから、10 個ぐらい携帯持って。……そうですね」



 上京して、翌日に電車乗って、これですよ。


 濃いわー。東京。



(2023 年 6 月 3 日)

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